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元旦にて

初詣の帰り、僕はメンバーと別れて野梨子と共に帰り、彼女の家に寄った。
彼女は少しだけ風邪をひいていて、メンバーと食事の約束をしていたが体調を考えて帰宅すると言ったからだ。

「あら、良いんですのよ。清四郎は皆と一緒に食事に行かれて」
「気にしないで下さい。僕も同好会の資料を4日までに仕上げないといけなかったので」
「そうですの。それなら仕方ないですわね。悠理達、楽しみにしていたでしょうに」
「野梨子の体調と僕の資料が終わればまた行けますよ。気にしない、気にしない」
「分かりましたわ」

彼女の家の居間に通されると、彼女はすぐにお茶を淹れに台所へ向かう。
居間は暖房が効いていて、外の寒さを忘れるほどだった。

「お茶、と思いましたけど、ココアにしましたわ。体の中から温まりましてよ」

ありがとう、と言って僕はカップを受け取る。
白いコーヒーカップには、クリームがたっぷりのココアが入っていた。

「野梨子、さっきおみくじを引いていたでしょ?何が出ました?」
「まだ見ていませんの」

カップを口元に持っていた彼女の頬が急に赤くなったのが分かる。
びっくりしたように僕を見て、それから目を閉じて受け皿にカップを戻した。

「誰も気づいていないと思っていましたわ」
「皆と離れた所で買っていましたから。“恋のおみくじ”」
「見ていたんですの?声をかけて下さった方が良かった」

彼女は拗ねたように目を逸らす。

「隠れるようにして買いに行っていたから。声をかけにくかった」
「誰にも言っていませんでしょう?“恋のおみくじ”のこと」
「ええ、もちろん。これから先も言いませんよ。で、いつ見るんですか?」
「今見てきますわ」

席を立ち、彼女は部屋を出る。
僕も追うようにして部屋を出た。
思った通り、彼女は縁側奥の茶室にいた。

「大吉?」
「・・・・・」

冬の茶室はひんやりしていて、まるで外にいるようだ。
炉に炭を起こしたら良いのに。

「恋のおみくじは誰と?」
「誰でも良いじゃないですか。清四郎には関係ありません」

彼女はかなり気に障ったようだ。
結果が悪いのが余計にそうさせるのか、僕にずっと背を向けている。
けれどそんな彼女を、僕は更に問い詰めてみたくなる。

「僕は知っているんですよ。野梨子の恋の相手を」

野梨子は僕を振り返り、冷たい目で睨んだ。

「随分意地がお悪いんですのね。子供の頃はとっても優しかったのに」
「むしろ野梨子、どうしてそんな言い方をするんです?僕のどこか意地悪だと?僕は野梨子の好きな人を知っていて、さっきのおみくじにその相手を重ねているんでしょうと思っているんですよ。おみくじの結果が良ければ僕も一緒に喜ぶだけでしょう」
「相手を知っているならなおさら、私の想いが届かないのも知っているくせに」
「そんな事、誰が決めるの?相手の本当の気持ちなんて誰も分からない」

思いつめたように大きな深呼吸をして、それから茶室の奥にある小さな床の間を見つめる。
可愛らしい雛人形の掛軸が飾ってあり、多分、野梨子がそうしたのだろう。

「あの人は私の事なんてどうも思ってないですわ。あの人の好きな人は、いつも一緒にいる悠理。彼女しか見ていませんもの」
「今はそうでも、これから先はどうなるか分からない。今は一緒にいて、好きな事をして楽しんでいるからそう思うだけで、いつか将来を考えた時、全く別な誰かを想うかも知れない。遊んでいて楽しいのと、生計を立てるために必要なのとは違う。まして悠理は奇抜過ぎる」
「悠理は特別ですわ。他とは比べ物にならない」
「そうですが」

それから野梨子は、静かに泣き始めた。
顔を覆い、肩を小さく震わせている。

「悠理の幸せを願わない訳ではないんです。でも私はそこまで大人ではありませんし、寛大にはなれない」
「僕の前では正直でいてよろしいんです。安心なさい」

震える肩に触れる訳にはいかない。
あるいは単純に、この部屋が寒過ぎるだけなのかも知れないのだから。

「おみくじの結果を信じる、信じないは自由ですよ。くじや占いは運命を好転させるための手段でもあるのだし」
「そんな事、最初から分かってますわ」

今度の彼女は泣いてはいなかった。
だからと言って諦めたふうでもない。
ただ前を見つめ現実を見据えている、そんな感じがした。




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今年、最後に


二学期末の大掃除をサボって冬休みに突入したら、生徒会長に呼び出された。
運動部の各部室の点検と、運動部部長の机の整理整頓くらいしろと。
高等部二年の時で、ちょうどあたし達が中心となって生徒会を運営する時期になっていた。
まだまだなれない働きと、まだまだなれない…生徒会長…
ご親切に、あたしを呼び出してから机の整理整頓が終わるまで付き合ってくれている。

「もう終わるから。先帰って、どーぞ」
「ちゃんとやった?」
「もちろん!部室の点検も、机も片付けた」

生徒会長はぐるりと目線を動かして、あたしの机の周りを確認した。  

「ま、いいでしょ。いいことにします」
「やった!」
「悠理は先にお帰りなさい。僕は今から職員室へ報告があるから」
「戸締まりくらいしてあげる」

珍しくあたしを見て、少しだけ笑う。
結局二人でテーブルを片付けて、消灯もする。
そして生徒会長は職員室へ、あたしは昇降口へと向かう。
冬休みの学校は静かで、夕方前なのにうっすらとしている。
今から魅録と約束がある。
制服は、魅録の家で着替えるつもり。
いつも通りに。
昇降口で靴を変え、手にしていたダウンを着込む。
今日は手ぶらで帰る。
荷物は邪魔だし、着替えは魅録の部屋にある。
外に出ると、痛いほど風が冷たかった。
空を見上げると、やっぱり。
クリスマスに必要な雪は降らずに、こんな時に。
灰色の空からチラリチラリ。

「降って来ましたね」

声に驚いて振り向くと、生徒会長が黒いコートを着込んで立っていた。

「早いね。先生は?」
「いなかったから。一緒に帰りましょう」
「ごめん、今から魅録んち」
「そう、遊ぶの?」
「うん」
「じゃあ、反対方向ですね」
「うん」

あたし達は校門まで白い息をはきながら歩き、そして止まる。

「もしかして、来年までさよなら?」
「あ、そうだ。元旦までさよならだ」

来年の元旦は、倶楽部みんなでお参りに行く予定。

「悠理、良いお年を」
「うん。清四郎も、良いお年を」

互いに手を振り、背中を向ける。


あの時、清四郎も誘えば良かった。
そうすれば、もしかしたら、運命は、少しだけ変わっていたかも知れない。
うつろい行く想いに翻弄されずに、誰も傷つかず、直接的に、あたしと清四郎は… 


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ある雪の日のできごと

高等部一年の最初の冬。

メンバーになれてるようで、まだなれてない。
親友と呼べるのは魅録だけ。
初等部から苦手意識たっぷりのお二人さんとは、ギクシャクが続いたまま。
あたしを理解しようとしている野梨子には感謝している。
でも清四郎との距離は、どうかなと思う。
アイツは、こんなあたしをどう思ってるんだろう。
守ってくれたのは、学園長との一件。ただの一度。
まぁそれをきっかけに、今があるのかなと思うけど。

どうしてそんなことを考えているのかというと、生徒会の資料を清四郎の家に届ける途中だから。
頼んだのが先生で、数学担当だった・・・赤点取ったばっかりの・・・

街はもうクリスマス一色で、キラキラしたイルミネーションがきれい。
歩道を歩く人たちも、なんだか楽しそう。
けれどあたしの心は、ちょっぴりどんより。
まだまだ苦手意識たっぷりだからかな。
街を抜け、小さな商店街を進み、住宅地へと歩く。
外灯が少なく普段は真っ暗だろうけど、ところどころに装飾されている庭園用のイルミネーションが道路を少しだけ明るくしていた。

今年のクリスマスはメンバーと過ごす約束をしている。 
美童の家で、可憐と野梨子の手料理。  
きっと、楽しくなる。
魅録も来るし、ギクシャクなんてならない。

やがて目の前に大きな病院が現れる。
そこだけは外灯がいくつもあり、奥の待合室と思われる前の中庭には、やはりクリスマスイルミネーションが飾られていた。
病院の広い敷地のアスファルトの私道を通りすぎ、しばらくすると院長先生の邸宅。
奥ゆかしい、って感じの。
あたしは、気が重いまま玄関のインターフォンを鳴らした。
一度だけ鳴らし、しばらくすると聞き覚えのある声が答えた。

「は~い」
「剣菱ですけど・・・」
「ああ、悠理ちゃん。清四郎ね?今呼ぶわ」

ドアの向こうで清四郎を呼ぶ声が聞こえ、間もなくそのドアが開いた。

「どうも。わざわざ、どうも」
「資料を渡してって、先生が」
「ああ、さっき学校から連絡が。寒いから中に入って」
「もう行くからさ」

資料を押し付け後退ろうとすると、奥で清四郎の姉ちゃんが呼び止めた。

「清四郎、あがってもらいなさい。わざわざあんたのために寄ってくれたんでしょう?」
「大丈夫です。遊びに行く途中だから」
「そんなこと言わないで。お茶でも飲んでいって。おいしいケーキもあるんだから」
「遊ぶって魅録?時間ないの?」
「ううん、いや・・・うん」
「寒いから入って」

あたしはドアを大きく開ける腕をすり抜けた。

「雪が降っているの?」
「え?」
「だって悠理の頭、少し濡れてるみたい」

後ろを振り返ると病院の中庭のイルミネーションが見える。
キラキラ光るライトの前には揺れる影。
すぐ後ろにいる清四郎に、ちょっとだけドキドキが走る。

「悠理、上、上」
「うん?」

見上げれは、雪。
チラチラと舞う雪の向こう側には一面に星空が見えた。

「雪~。気づかなかった。ずっと学校から歩いて来たけど」
「暗いから。でも珍しいですね。クリスマス前に雪なんて」

雪と星空に見とれていたら、触れるほど隣に清四郎が立っていた。

「つ、積もるかな?」
「さぁ、難しいでしょうね。星空も見えちゃってますし」
「クリスマスも、こんなんならいいな」
「そうですね。クリスマスにはそうなると、いいですね」

あたしと清四郎は、しばらく玄関先で空を見上げる。
そうしている内に、あたしはド派手なクシャミをしてしまった。

「ほらほら、やっぱり。ちょっと中で休んで行きなさい」
「でももう遅いから。魅録も待ってるし」
「魅録・・・」

その時初めて、魅録への罪悪感と独りよがりな想いが交差する。

「分かった。今度はゆっくり遊びにおいで」
「ありがと。そうする」
「傘をお持ちなさい」

そう言って玄関に入ろうとする清四郎から離れ、あたしは一気に、今度は確かに後退った。

「大丈夫。傘はいらない」
「濡れますよ」
「雪だもん」
「風邪ひきかけてる」
「濡れる前に、走る」
「あ、ほ・・・」

あたしは翻り、また呼び止められないように走り出す。

「悠理!!!ありがとう!また明日」

清四郎が、走るあたしの背中に呼びかける。
あたしは・・・やっぱり振り返らないで、代わりに大きく手を振った。



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おわる、しあわせ

いつの間に、季節が変わったのだろう。

玄関先の松の木の下に、重なる枯葉を見て気付く。
見上げれば弱い陽射しが辺りを照らし、低い影が午後の日の短さを覚えさせる。
秋になったとばかり思っていたが、すっかり、季節は冬に変わっていた。

何度も、何年も、この季節は淋しい時だと感じていた。
春の希望も、夏の激しい想いも、秋の切なさから生まれる淋しさは、当たり前の巡りだと思っていた。
けれど玄関先の光景は、現実をそのまま受け入れられるほど優しかった。

もう、多分、今までのようではない。
もう、多分、あの日々のように傍にはいられない。

もう、多分、逢えない。

だからこの事実は、もう、苦しまなくても良いと言う現実なのだ。

逢えない、だから、この先はない。
逢えない、だから、終わる。

終わると言う事はこれ以上何もなく、だから、苦しまなくても良いのだ。

私は同じ事を何度も心の中で繰り返す。
喜びの叫びを、声にならない声で、何度も。




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秋の気配

さっき、数年ぶりに男友達に会った。
偶然出会えた訳ではなくて、電話が急にきて、

「帰省したから、買ったばかりの姉貴の車でドライブしよう」

と誘われた。

「これまた急だね」
「そう。急に休みが取れたから帰ってきたんだけど、捕まるのって悠理くらいなもんでしょ?
誰彼誘うよりいいかなって思って」
「ふうん。嬉しいような、ヘンな感じ」

そうしてあたし達はドライブに出かけた。
真っ赤なボルボは和子姉ちゃんの新車。

「怒られないの?買ったばっかりの車でドライブなんてさ」
「大丈夫、大丈夫。全然乗ってないんだから。たまに動かさないとね」

確かに、自宅と病院は隣りあわせ。
雨にだって当たらないで着いちゃう。

「わぁ、紅葉だぁ。今が一番だね」

高速道路は北へ北へと向かっている。
街並みをずっと離れ、窓の外はどこか懐かしい景色になる。
あたしは口に出さないまま、この気持ちをずっと心の中に抑え込む。
だって、その気持ちの理由、あたしは知っているから。

あたし達はお互いの近況を話し、近い将来について伝え合った。

「いずれ地方研修医が終わったら、親父さんの病院に来るんだね」
「ええ、その予定です。姉貴は嫌がっているけど、本心ではないのは分かってますからね」
「きっと、待ってると思うよ」
「ええ。悠理は?豊作さんのアシスタントはうまくいってる?」
「この通り。けっこう融通がきくけど、出張となれば別かな」
「でも慣れて、でしょ?」

うん、まぁ・・・と言いかけて、あたしは窓の外にくぎ付けになる。
懐かしい風景。知っている風景。

「この高速道路を通って、よく魅録と出かけたんだ」
「知ってる。その度に、僕に話してくれたね」


もう、五年以上前の話だ。
魅録は防衛大に入って、忙しくなったんだ。
それでも最初の内は、長期の連休を利用してドライブに連れて行ってくれた。
新緑の時も、草木が生い茂る夏の日も、色とりどりの紅葉の時季も、葉っぱが枯れた冬の初めにも。
確か最後の日は、夏がすっかり終わった秋の日だった。
あたし達はいつも通りの高速道路を走り、お気に入りのレストランのある街で降りた。
昼を過ぎたばかりだと言うのに、弱く低い陽射しが色づいた木の葉を照らしていて、何だか淋しい気持ちになったんだ。
レストランの駐車場には数台の車が停まっていて、それすらも物悲しく思えた。
あるいは、このレストランで伝えられるだろう事を感じていたのかも知れない。
ランチメニューをそれぞれ注文し、待っている間、普段は弾むはずの会話は途切れがちだった。
魅録に変化があったのは分かったけど、言葉に出して訊けなかった。
テーブル越しに目が合うと、困ったように微笑んだ。

「今日は悠理に話があるんだ。大事な話だよ」
「うん」

その時の事は詳しくは覚えていない。
もう何年も前の事だから。

結局はこういうコト。 
つまりは・・・今までのような関係は続けられないって。
自分はこれからいろんな経験を積みたいし、長期の休みを利用して留学をしたり、より多くの場所でたくさん学びたいって。
あたしとの時間は貴重だけど・・・

「悠理との時間は貴重だけど、今できる全ての事にチャレンジしたいんだ。ごめん、だけど」
「あっは!ナンだ、そんなコト、ごめんじゃないよ。二度と会えなくなるわけじゃないし」
「うん」 
「今よりも遊べなくなるだけじゃん」
「・・・・・」

本当は気付いたんだ。
魅録は、自分が納得できるまで、あたしと遊ぶ気なんてないってこと。
味も素っ気もないランチを食べ、喉を通りにくいデザートをスプーンですくい、温かな紅茶を飲んだ。

「他の誰かを好きになったわけでもないしね、魅録」
「・・・・・」

自分でもびっくりするくらい、女の子な質問をしたっけ。
あの時記録は何も答えなかったけれど、今思えば、答える事ができなかったんだね。
心はそうでなくても、無意識に、あたしから離れたいと感じたのかな。

あたし達はレストランの二階にある資料室に行った。
レストランの利用は頻繁だったけど、資料室に上がるのは初めてだった。
料理の味はもちろん、レストランの古い洋館のような外観もあたし達は大好きだった。
資料室には、その建物のリノベーションに至るまでの歴史が描かれていた。
帰り際、一階と二階の踊り場で少しだけ魅録と話をした。

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窓の外は夕方の気配がした。
そう、秋色の夕焼けがあたりを支配していた。
凄く冷ややかな空の色だった。

「悠理の事は今までもこれからも変わらず大切な親友さ」
「うん、ありがと」
「しばらくは会えなくなるけど、また時間ができたら遊ぼうな」
「りょうーかい!!」

ほんとは泣きたいほど悲しかった。
魅録はあたしの事、友達以上には思っていないって分かったから。
そして何より、自分が魅録に恋してたって、実らない恋心を抱いていたって初めて知ったから。


「立ち直るまで、五年もかかったんだよね」
「ああ、そうでした。ついこの間まで、僕に頼ってばかりだったね」
「ええ、そうだったかなー。最初の内だけだったんじゃないの?」
「僕も勉強が忙しかったから、メールや電話でのお相手でしたけどねぇ。
つまんない、つまんないって言って、お前、勉強でもしろって思いましたよ」
「あはは」
「けれどある日を境に、メールのニュアンスが変わったんです。
どうだったかな、うまく説明できないけど、もう大丈夫って思ったんです」
「うん、そうかも。あたしもいつの時点でスイッチしたのかは忘れちゃったけど、不思議なくらいもう平気って思って」

赤いボルボは、変わらない外観のレストランへと到着する。

「もしあの時、ここに清四郎と来たら、きっと心が折れちゃてダメだったかもね」

あたし達、あたしと清四郎は、レストランにはまだ入らずに周辺を散歩する。
綺麗に色付いた葉とは対照的な落ち葉は枯れ、靴底で踏むたびに気持ちの良い音がした。

「そんな事しませんよ。僕は魅録じゃないもの。悠理が傷付くだけでしょ」
「ふうん」
「それにね・・・」

色付いた木々が並ぶ遊歩道に、細く淡い陽射しがあふれている。
この道を歩くのは初めてだけど、懐かしくて戻って来たっていう不思議な感じが起こる。


「いつまでも同じ状態なんて続かないんです。必ず、時間が解決します。
悠理は必ず立ち直るって、僕は信じてました」
「うん、そうだ。その通りだった」

清四郎は立ち止まり、それからあたしを見つめてにっこりと微笑んだ。

「大丈夫、大丈夫。もう、大丈夫。でも僕はこれからも悠理に何があったって、いつでも傍にいるつもり、ね」

あたし達の間に秋の陽射しが届き、どこか遠くで知らない鳥の鳴き声がした。
さ、お腹すいた。ご飯を食べに行きましょ、って清四郎は、あたしの背中にポンッと手を当てた。





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