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ある雪の日のできごと

ある雪の日のできごと

高等部一年の最初の冬。

メンバーになれてるようで、まだなれてない。
親友と呼べるのは魅録だけ。
初等部から苦手意識たっぷりのお二人さんとは、ギクシャクが続いたまま。
あたしを理解しようとしている野梨子には感謝している。
でも清四郎との距離は、どうかなと思う。
アイツは、こんなあたしをどう思ってるんだろう。
守ってくれたのは、学園長との一件。ただの一度。
まぁそれをきっかけに、今があるのかなと思うけど。

どうしてそんなことを考えているのかというと、生徒会の資料を清四郎の家に届ける途中だから。
頼んだのが先生で、数学担当だった・・・赤点取ったばっかりの・・・

街はもうクリスマス一色で、キラキラしたイルミネーションがきれい。
歩道を歩く人たちも、なんだか楽しそう。
けれどあたしの心は、ちょっぴりどんより。
まだまだ苦手意識たっぷりだからかな。
街を抜け、小さな商店街を進み、住宅地へと歩く。
外灯が少なく普段は真っ暗だろうけど、ところどころに装飾されている庭園用のイルミネーションが道路を少しだけ明るくしていた。

今年のクリスマスはメンバーと過ごす約束をしている。 
美童の家で、可憐と野梨子の手料理。  
きっと、楽しくなる。
魅録も来るし、ギクシャクなんてならない。

やがて目の前に大きな病院が現れる。
そこだけは外灯がいくつもあり、奥の待合室と思われる前の中庭には、やはりクリスマスイルミネーションが飾られていた。
病院の広い敷地のアスファルトの私道を通りすぎ、しばらくすると院長先生の邸宅。
奥ゆかしい、って感じの。
あたしは、気が重いまま玄関のインターフォンを鳴らした。
一度だけ鳴らし、しばらくすると聞き覚えのある声が答えた。

「は~い」
「剣菱ですけど・・・」
「ああ、悠理ちゃん。清四郎ね?今呼ぶわ」

ドアの向こうで清四郎を呼ぶ声が聞こえ、間もなくそのドアが開いた。

「どうも。わざわざ、どうも」
「資料を渡してって、先生が」
「ああ、さっき学校から連絡が。寒いから中に入って」
「もう行くからさ」

資料を押し付け後退ろうとすると、奥で清四郎の姉ちゃんが呼び止めた。

「清四郎、あがってもらいなさい。わざわざあんたのために寄ってくれたんでしょう?」
「大丈夫です。遊びに行く途中だから」
「そんなこと言わないで。お茶でも飲んでいって。おいしいケーキもあるんだから」
「遊ぶって魅録?時間ないの?」
「ううん、いや・・・うん」
「寒いから入って」

あたしはドアを大きく開ける腕をすり抜けた。

「雪が降っているの?」
「え?」
「だって悠理の頭、少し濡れてるみたい」

後ろを振り返ると病院の中庭のイルミネーションが見える。
キラキラ光るライトの前には揺れる影。
すぐ後ろにいる清四郎に、ちょっとだけドキドキが走る。

「悠理、上、上」
「うん?」

見上げれは、雪。
チラチラと舞う雪の向こう側には一面に星空が見えた。

「雪~。気づかなかった。ずっと学校から歩いて来たけど」
「暗いから。でも珍しいですね。クリスマス前に雪なんて」

雪と星空に見とれていたら、触れるほど隣に清四郎が立っていた。

「つ、積もるかな?」
「さぁ、難しいでしょうね。星空も見えちゃってますし」
「クリスマスも、こんなんならいいな」
「そうですね。クリスマスにはそうなると、いいですね」

あたしと清四郎は、しばらく玄関先で空を見上げる。
そうしている内に、あたしはド派手なクシャミをしてしまった。

「ほらほら、やっぱり。ちょっと中で休んで行きなさい」
「でももう遅いから。魅録も待ってるし」
「魅録・・・」

その時初めて、魅録への罪悪感と独りよがりな想いが交差する。

「分かった。今度はゆっくり遊びにおいで」
「ありがと。そうする」
「傘をお持ちなさい」

そう言って玄関に入ろうとする清四郎から離れ、あたしは一気に、今度は確かに後退った。

「大丈夫。傘はいらない」
「濡れますよ」
「雪だもん」
「風邪ひきかけてる」
「濡れる前に、走る」
「あ、ほ・・・」

あたしは翻り、また呼び止められないように走り出す。

「悠理!!!ありがとう!また明日」

清四郎が、走るあたしの背中に呼びかける。
あたしは・・・やっぱり振り返らないで、代わりに大きく手を振った。



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