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冬の虹

冬の虹

久しぶりに悠理と遊んだ日曜日。
今日は一日中、二人で俺のバイクに乗ってあちらこちら走った。
最初は休みとあってご機嫌だった彼女も、夕方が近づくにつれて不機嫌になる。
あるいは、午後になって降った雨のせいかも知れない。
俺達は雨宿りに入ったコンビニエンストアでちょっとだけ喧嘩をした。

「風邪をひいたみたいだ。鼻がつまって、頭がぼぉっとする」
「嘘つけ!さっきまではしゃいでたくせに。それに普段よりかなり昼飯食ってたぞ」
「今、雨にあたってひいたんだよ。寒気もしてきたもん」
「明日学校だからだろ?日曜日の午後にありがちなユウウツな気分なだけだ」
「違うもん。熱っぽいもん」
「休むなよ。それでなくても出席日数足りなくなるぞ。また三年生をやりたいか?
みんなで卒業するんだ」
「留年なんてもうしないよ。ナンとかするんだからさ」
「自分の力で何とかしろよ。親の力じゃなくてさー」
「うるさいな」

カフェスペースのカウンターで窓の外を見る。
いつの間にか雨は小降りになり、雨雲はどこかへと消えていた。
薄い雲間から陽射しさえ見える。
二月になり、少しずつ日も長くなって、この時間でもまだ明るい。

「夕飯はどこに行く?」

仲直りのつもりで誘ってみる。
時間には早いけど、場所によってはまたバイクを走らせられる。

「食べたくない」
「何で?風邪くらいで食欲は落ちないだろ」
「いらない。食べたくない」
「いつまでそんな事言ってるんだよ」
「いらないったら、いらない」

彼女のわがままに、イライラする。

「分かった。勝手にしろ。俺は誰か誘って行くから、お前はここから一人で帰れ」

窓の外を見たままの悠理は、一瞬、顔から表情が滑り落ちる。
けれどすぐに唇を噛み、顔を逸らして店から出て行った。
近くにあるバス停に歩み寄り、立ち止まって時間を確認しているようだ。
それからキョロキョロと周りを見渡し、すっかり晴れ上がった空を見上げる。
じっと、ずっと、彼女は空を見上げている。
やがて俺を振り返り、口を動かした。
何かを俺に伝えようとしているのか。
けれど俺の意地っ張りな根性が、彼女を見返してしまう。
程なくやって来たバスに、彼女は乗ってしまった。
俺はコンビニエンスストアを出て、停めていたバイクに歩み寄る。
少しだけ夏を思わせる陽射しと晴れ上がった青空。
バスが去った方へ振り返る。

そこには巨大な、虹。
くっきりと半円を描き、はっきりした色合いをしている。

さっき悠理は、この巨大な虹の存在を俺に伝えたかったのだ。

そう言えば以前誰かが、数時間も消えずにいた虹を見たと言っていた。
俺はスマートフォンを片手にアプリケーションを開く。
この虹の向こうにいるはずの悠理へ届くよう、急いで指を動かした。




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