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戻れるならば・・・

戻れるならば・・・

熱さと息苦しさ、動悸で目が覚めた。
あたしは慣れないベッドの中にいて、布団の厚さと重さに耐えきれずに体を動かしたら、下腹部に鈍い痛みを感じた。
痛みの理由について思いめぐらしていたら、どこかで誰かの話し声が聞こえた。
その声には聴き覚えがあった。
聴きなれたトーン。でも、話の内容までは聴こえない。

多分電話だと思われる。
息を潜め、耳を澄まし、少しだけ体の位置を変える。
その時、ベッドの中から漂った匂いで、あたしは下腹部の痛みの理由と声の主を知った。

どうしてこうなってしまったんだろう?

あたしはただ、中間試験の科目で、点数が稼げそうな教科に力を入れたかったからこの部屋に来ただけだった。
1時間ばかり勉強して、眠気がさして・・・
あいつもちょっとだけなら眠ってもいいって。
最初は驚いて体が動かなかったけど、心臓がドキドキして、けれど・・・

このまま進むところまで行ってしまえばいい、と正直思った。

初めてだから、されるままが怖かったけど、望んでいた相手だから嬉しかった。
誰でもないあたしと関係を持ったんだと、どこか勝ち誇った気持ちになれた。

電話はまだ続いている。
声のトーンが一定で、事務的な連絡をしているのか。
しばらくして声のトーンがあがり、電話が終わりに近づいていることが分かった。

あたしは目をつむり、部屋に入ってくるのを待った。



「おい、悠理、起きろよ!」

肩を思いきり揺さぶられ、あたしは驚いて目が覚める。
親友の魅録が、あたしをのぞき込んでいる。

「ちょっと休憩が、睡眠だぞ!?何時間寝てんだよ!」
「なに?なんで?」

あたしはゆっくり体を半分だけ起こす。

見慣れた部屋。座り慣れたベッド。大好きな匂い。
親友の、部屋。

「ごめん。もう遅いの?」
「いいよ。泊っているけよ。明日も休みだし、俺はソファで寝るからさ」
「うん」

あたしはもう一度ベッドに体を預ける。
息を潜め、耳を澄まし、枕の上で頭を整える。
さっきのは夢で、このベッドの中が現実だと分かる。
失望、諦め・・・罪悪感。
この間、魅録に好きだと言われた。
あたしもって言って、今まで以上の関係になるんだと知った。
けれど夢は、あたしの本当の気持ちと望みを知っている。

戻れないんだよ、もう。

魅録のことは好きだから、悲しませたくないんだ。
魅録の、喜ぶ顔が好きだから。
そっけないあいつの顔を見るよりも、幸せなのかも知れないし。

「なんの音?どっかでカタカタ言ってない?」
「外だろ。風で枝が揺れてるんだ」

うん、てあたしは言う。

どうせ戻れないなら、戻る理由をなくせばいい。
今夜のうちに、そうなっちゃえばいい。

だれに対しての優越感なんだろう?
あいつの気持ちを知ろうともしないあたしは、もう負けてるのか?

交差する気持ちを察するかのように、魅録はベッドの中のあたしを見つめる。

「この間のことだけど、ゆっくりでいいからさ。今までみたいな感じで。今は俺、それで充分」

魅録は優しい。
けれどこのままだと、あたしの気持ちは別の方向へどんどん進む。

今なら間に合う?
それとも本当に戻れない?

あたしは夢の続きを見るかのように、ギュッと目を潰った。



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