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2014年03月

それぞれの確かな想い

アイツの所為で、週明けは大変だった。
だって・・・
イタズラに吸われた下唇に、斑点が出来てしまったから。
日曜日の朝に気が付いたんだけど、すぐに治ると思った。
でも月曜日の朝になったら、赤紫から黒ずんだ紫色に変色していた。


まさかあたしが可憐みたいに真っ赤な口紅を付けるワケにもいかず、
デーモン小○のようなメイクをする訳にもいかず、結局マスクをして登校した。
それでもって何とか放課後まで部室を避けた訳だけど・・・
二度も誘いを断るのも悪くて、同じクラスの魅録に誘われるまま、いつものように部室に足を運んでしまった。
そうなると、お決まりの可憐の手作りお菓子。
ふわふわのシフォンケーキに、思わずマスクを外してしまった。


「あら、ちょっと、悠理、どうしたの?リップ?でも、何か変ね。怪我?」


可憐がいの一番に気が付きやがった。


「本当。どうしましたの?ご自分で噛んだとか・・・」


野梨子も近付いて来た。
あたしはえへへと笑ってみせる。
ちょっと唇の端が歪んで、顔が熱くなるのが分かる。


「そうなんだ。飯食ってたら間違って噛んじゃった」
「普通、噛むなら舌よね」
「でも、悠理ですもの」
「そうよね、悠理だもんね」
「そうだよ、あたしだもん!」


あはは~と笑って・・・誤魔化せたと思ったらっ!!


「どうかな~。あつ~いキッスでもして吸われたんじゃないの?」


やっぱり美童だ、美童だよっ!


「そ、そんなワケないじゃん。誰がソンナコトするかよ。気色悪いなー」
「そーよー。誰が悠理とキスなんてするのよ。逆に噛まれちゃうわ」
「悠理だってちゃんと女の子だよ。年頃のね。だろ?清四郎」
「・・・・・そう、ですね」


チラリと清四郎を見たけど、そ知らぬ顔で新聞を読んでる。


おい!お前の所為なんだよ!
ちゃんと助けろ!
って、どうやって・・・?
魅録~、ちょっと話をかえてくれ~。


今度は魅録を見たけれど、何故か真っ赤な顔してあたしを凝視してる。
どーしたんだよ?何があったんだよ・・・


「魅録ったら真っ赤な顔して。チチとのキスでも思い出してんの?」
「!!」


そう・・・そうなんだ・・・
チチとね・・・知らんかったよ・・・


急に顔の熱さが冷めた。
何だか胸が苦しい。
魅録は真っ赤な顔のまま否定してるけど、どっか嬉しそう。
まあ、魅録のおかげで的から外れたけど。

魅録から視線を外すと、今度は冷たい目線とぶつかった。


あ。


更に別の方を見る事にする。
美童がニヤニヤしながらウィンクしてきた。


・・・・・。


あたしはこの空気に耐えられなくて、部室を出る事にした。
もちろん、黙ってね。
そうっとドアへ向かったけど、以外にも声をかけたのは、話題の渦中にある魅録だった。


「待てよ、悠理。ちょっと話があるんだ。一緒に帰ろうぜ」


振り向くと、魅録はもう立ち上がってこちらにやって来る所だった。


「話って?」
「うん、後で。じゃあな~」


魅録は肩に腕を回して、もたもたしているあたしを強引に部室から出した。
部室から出るほんの一瞬、清四郎と目が合ったような気がした。
ちょっと、胸が痛んだ。






夕方の児童公園。
子供達と走り回って遊んだ後、あたし達二人だけが残された。
夕陽がまだ、遊具をほんの少し照らしている。
だから二人でジャングルジムの上まで登った。
魅録のピンク色の髪が、土曜日の明け方のように真っ赤に染まっている。
その額も、肩も・・・


「魅録、話ってなあに?」


あたしは訊く。
なんでだろ?胸がドキドキしてるよ。


「うん・・・チチの事なんだ」


あたしは、胸が何かで突かれたように痛む。


ああ、やっぱり・・・会いに行きたいんだね・・・


「いいよ、いつでも。父ちゃんに言ってやる。会いに行きなよ」
「違うんだ、悠理。その事、ありがとな。でも、違うんだ」
「なーに?」


魅録は照れたように空を仰ぐ。
それから、ジムに座りこんだ。
あたしも魅録の隣に座った。
制服着たデカイ二人が、こんな高い所に座り込んでいるなんて、なんか滑稽だ。


「昨日、ゆっくり考えたんだ。彼女の事。正直、悠理の言葉に甘えようかなっても思った」
「うん、それでいいじゃん。そうしなよ」
「いや、やっぱこのままがいいなって考え直した」
「なんでさ?」


気持ち良さそうに夕陽を浴びて、思っていた以上に彫りの深い顔が照らされている。


「それが、チチと俺の幸せだって思えたから」


魅録のその言葉が、あたしを決定付けた。
悲しいとか、悔しいとか、羨ましいとかじゃなく。

今あたしが感じているのは、この間までの恋の苦しみではない。
魅録が受けている感情やあの島でのチチとの別れに比べれば、
あたしの魅録への想いや諦めの悩みなんか小さくおどけたものになって行くように思えた。
それに魅録に想われているチチだって、一国の王女としての逃れ難い運命の支配を受けてるんだもの。

例えもう二度と・・・チチに会えなかったとしても・・・
魅録はきっとチチとの出来事を、生涯大切に胸に抱いていくんだ。
互いを想い合った美しい思い出として。


遠くのビルの谷間に沈みがかっている夕陽を見つめている魅録は、とても綺麗。
まるで清浄な気持ちを表しているみたい。

きっと別れも悲しみも受け入れて、チチとの出逢いに感謝してるんだね。
だって、今の魅録、すっごく幸せそうに輝いているもの。

チチも今頃、おんなじ事を思っているんだろうな。


国境も時空も越えて、二人は愛し合ってるんだね。


あたしも魅録が見つめる夕陽に視線を移す。


「夕陽、綺麗だな」


あたしは言う。


「そうだな」


魅録も言う。


「でも、悠理も綺麗だ」
「え・・・?」
「なんか、大人っぽく見えるぞ」


一瞬戻した視線を、もう一度夕陽に移す。


「だって、大人になったもん」
「そうか?そう、かもな。うん、そんな感じがする」
「きっと、魅録も大人になったからだ」
「うん」


大好きな魅録の褒め言葉はとっても嬉しかった。
でも、もう、恋のトキメキとは違う。


魅録、ありがとう。

あたしもいつか、魅録のような恋をしたいって思うよ。
今までのあたしからは考えられないほど照れくさいけれど、本当なんだ。
魅録のように綺麗な心で人を好きになって、同じ心で好かれたい。





あたしと魅録は、児童公園で別れた。





家の裏門に着いた時そこにいたのは、雨に濡れた迷子の子犬みたいな顔の清四郎だった。
あたしは思わず、駆け寄って頭や顔をメチャクチャに撫でたくなった。
別にペットって意味じゃないけれど。


今なら・・・清四郎の気持ちを、素直に受け入れる事が出来そうな気がした。






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それぞれの揺れる想い・・・

ドアが、開いた。
だから、開け放していた窓から風が部屋に入り、ドアから廊下へと吹き抜けた。
天井近くから垂れ下がっているレースのカーテンがふわあっと広がった。
あたしはそのドアを開けた人物が誰であるか、見なくても分かっている。


「来ると思った」
「僕が?」
「ああ」


ベッドで寝転んだまま相手を見もしないあたしを、近付いて覗き込む。
厭きれたような溜息が聞こえた。


魅録とツーリングに出かけた後、家まで送ってもらった。
時間は昼ちょっと前。
お昼ごはん食べてきなよって誘ったけど、シャワー浴びたいからって魅録は帰って行った。


つまんないの。

今日は土曜日だよ?
まだまだ、明日の夜まで遊べるのに。
あたし、遊び足りないよ。

なーんて、ね。
本当は独りで部屋にいたくなかった。
だって、きっと、アイツが来るもん。
あたしに会いにさあ・・・


「僕が、悠理に愛の告白をしに来ると思った?」
「・・・・・」
「お前も、随分自信満々だな」


何だよその言い方、ちょっと恥ずかしいじゃん。


「・・・いじわる・・・」


清四郎は勢いよくベッドに座り込む。
おかげであたしは、質の良いスプリングでバウンドしてしまった。


「残念ながらね、違うんですよ。お前、今週の水曜日にあった役員会、サボったろ?
運動部からの報告書、提出期限が過ぎてるんですよ。僕に始末書を書かせるつもりですか?」
「しまつしょお?大げさなっ!!」
「兎にも角にも、今日の訪問理由は報告書の件です」


そう言うと、清四郎はあたしの頭をコツンと叩く。


「いった~い」


枕に顔を埋めたまま、文句を言おうと・・・


「悠理、顔を上げて」


あたし、清四郎のそのトーン、苦手なんだよ。


「あんだよぉ?」
「顔を上げてって、言ってるでしょ?」
「い、いや。何するの?」
「何もしないから」
「でも・・・」


もたもたしていると、清四郎は静かにベッドから立ったよう。
離れて行く気配が、何故か淋しく思える・・・何故?


「報告書を書いてもらったら、今日は退散します。だから早くこっちへ」
「わーったよ」


あたしは渋々体を起こす。
でも、何となく清四郎の顔が見れない。
どうしたんだよ、あたし・・・
たかが清四郎じゃないか。


清四郎の視線を避け、あたしは部屋の中央にある丸テーブルに着く。


「あ、あの、コーヒーでも持って来てもらおっか?」
「お願いします」

既に席に着き、清四郎が片方の手で頬杖をついている。
もう片方の手の指先は、テーブルを軽く叩いてる。


イライラしてんの?


もう一度席を立ち、ドアを勢いよく開けて大声で叫ぶ。
コーヒーとケーキを持って来てって・・・


「あ、あのさ、清四郎」
「ん?」
「そうやって手元見られてっと、書き難いんだよね。向こうのソファで待っててくんない?」
「だってコーヒー飲んでる」
「持ってけばいいじゃん?」
「ケーキ、食べてる」
「・・・・・」
「悠理、お前は誤字脱字が多過ぎる」
「へ?」
「報告書の文面、おかしいし」


あたしは頬が熱くなるのを感じながら、目の前の報告書の文章を消しゴムで消そうとして、その手首を掴まれた。


「別に消す程ではないけど」
「だってっ!!」


悔しくって睨んで見せたら、以外な優しい眼差しに出合った。


「悠理の手首、思ってた以上に細いんだな。あの時も、抱き締めた体が細くて、正直驚いた」


初めは何の事だろうって思ったけど、すぐに分かった。
あの島の帰り・・・船の上で・・・だろ?

ああ、もうっ!調子狂っちゃうっ!


ギクシャクしながら何とか報告書を書き終えて、清四郎の方へ差し出す。
相変わらず汚い字ですね、何て言いながら、清四郎はそれを封筒に収めた。
あたしは冷めたコーヒーを飲む。
まずい・・・砂糖とミルクを入れたらもっとまずくなった。


「さてっと、帰ろうかな」


徐に立ち上がる。
あたしは視線を上げずに、目の前の濁ったコーヒーを見ている振りする。


「止めて、くれないんですか?」
「は?え?」


びっくりして見上げたら、さっきのような眼差し・・・はあ、狂うなぁ、今日は。コイツの所為で。


「やっと見てくれた」
「・・・・・。からかうなよ」
「からかっちゃいない」
「でもっ!朝の電話だってそうだったじゃないか」
「ねえ、悠理。僕だって好きな人を前にすると、調子狂います」
「な?は?え?」
「いや・・・今日は、だから帰りますって。ちょっと動揺してるのかな」


らしくない台詞に、気の利いた事を言ってみた。


「自信満々って言ってたくせにぃ」


清四郎は厭きれたように声を立てて笑うものだから、あたしもつられて笑った。
それから、清四郎をドアまで送った。

でも・・・急に立ち止まられて、あたしは背の高い、広い背中に思いっきり顔をぶつけた。


「どーしたんだよ!?いってぇ」


鼻を押さえて、涙目で訴える。


「悠理、一つだけ」


清四郎は振り返り、あたしを見つめながら鼻を押さえていた手を取った。
もう一方の手も同じように取って、あたしの両手は、何時の間にか壁へと押さえつけられていた。
どうしたらいいのか分かんなくて、清四郎の顔がまともに見れなくて、視線が揺らいだ。


「目を閉じて」
「え?」
「きっと答えが分かるから」


言っている意味が分かんなくて、でも、抵抗する気持ちもなくて・・・

そっと目を閉じると手首が解放され、両の頬を優しく包んで上を向かせられた。
心臓の音が聞こえるんじゃないかと思うほどドキドキして、なるように任せるしかなかった。
ううん、何をされるのか、あたしは分かっていた。
分かっていて、それを止めさせる事が出来なかった。

唇が、触れる。

手が震えて、足がジンジンしてきた。
でも、清四郎と唇を重ねると、全ての答えが分かったような気がした。
間違った想いを抱き続けいていた自分を、だから・・・怖くなってしがみついた。
清四郎は重ねたままの唇で、「大丈夫だよ」って言ってくれた。

だから・・・大丈夫なんだと思う・・・

清四郎とこうなる事で、魅録への気持ちがなくなる、自分が失われるって思ってたけど、
違うんだね。
あたしは、何も失われないんだよね?

清四郎が言う、「自信満々」って、この事を言っているの?


重ねた唇が熱を帯びる程、そんな事、どうでも良くなっていく。


清四郎、ねえ、もっと・・・


そう言いたくなる自分に、ただ、驚いている。


唇が離れる瞬間、下唇を噛まれ、強く吸われた。





じゃあまた、月曜日に、って清四郎は帰って行った。
何でああやって、すぐに調子が戻るかな?
あたしは・・・呆然として、壁際で座り込んでいた。



その日、暫く自分の顔を見れなかったけど、夜になってバスルームの鏡を見たら・・・
吸われた下唇に、清四郎との跡が残っていた。






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それぞれの想い・・・

ナンでもないなんてうそ。
いつも通りを装っていたって、心ここにあらずじゃん、魅録。
さっきからあたし、お前の名前を呼んでいるんだぞ。

「ねえっ!魅録ってば!!」
「あん?なんだ、悠理」

海にツーリング行こうって誘ったの、魅録の方じゃんか。

「お腹空いた~」

魅録はちょっと顎を上げて、眉間に皺を寄せる。

「もうちっと、待て」

そう言って遊歩道の柵に腰をかける。

「見ろよ、悠理。綺麗だな」

朝焼けの空。
それをうっすらと映す、水平線。

ナンでもなければ、綺麗に見えるよ、あたしだって。

でも、寒すぎる。
今の季節は、寒すぎるよ。
お揃いのライダースーツは、ちっともあたしを温めてくれない。
それに・・・魅録の気持ちがどっか行っちゃってるのも問題。

そんなあたしの気持ちに気付くこともなく、魅録はずっとずっと遠くの国へと心馳せている。
ずっとずっと遠くの国の王女に心馳せている。
心馳せる?思いを馳せる?この表現って正しいっけ?また清四郎にバカにされるぅ。
独り問答しているあたしなんて、魅録にはどうでもいい感じ・・・ちょっとからかってやれ。

「”暁の太陽のかけら”なんて、可憐もかっこいいコト言うよな」

あたしは嫌味っぽく魅録の隣で言ってみた。
魅録はムッとしたような顔を海を見たままでしたけれど、怒ってるワケじゃない。
ただ・・・懐かしんで、せつなくて・・・浸ってたいんだろ?

浸っていたいだけ、なんだろ?


「・・・・・夜明けだ」


太陽がさーっと黒かった海を赤く染め始める。
じっと見ていると、あっという間に海が本来の海の色になり、
夜明けの空も見慣れた色へと戻る。
真っ赤だった魅録の髪の毛も、いつものピンク色になる。


ふう、と深い溜息を吐く。
恋煩いだね、全く!


「なあ、魅録」
「なんだ」
「行きたきゃ連れてってやる、いつでもさぁ」
「なんのことだ?」
「だからあ~」
「だからあ~なんだ?」
「会いたいんだろ?チチに」
「ぅっ!!」

魅録は小さく呻く。かわいいねぇ、魅録ちゃん。

「別に、そんなんじゃない。そのうち、忘れる」

やっぱりね。

「魅録、あたしが忘れさせてあげようか?」
「ばーか」


ナンダヨッ!思い切って言ったのにっ!
もう・・・純真な乙女の告白なのに。

結局茶化される。
なあ、魅録、あたし本気なんだってば・・・

海からの冷たい風が、キーンと心の奥底までも冷やしてく。
ほんのちょっと先、手を伸ばせば、触れる所にいるのにさ。

魅録の、バカ。



ヴィ~~~ン・・・


あ、ヴァイブ。
メールかな?


清四郎からだ。

なんだあ、こんな朝早く。


おはよう。
魅録とツーリングって、今は戻っているのか?


おっす。
へへへ~朝帰り。
今一緒に夜明けのコーヒーだよ。
で、なに?


送信した直後に着信だ。ったく・・・

「なんだよ」

『魅録に用事だったんだ。
ドライヴモードになってるでしょ?
昨日一緒にツーリングって言ってたから』

「ああ、チョット待って」

『あ、いや、いいんだ。悠理、待て』

「ん?」

『お前にも用事があったんだ』

「ついでか?」

『前に言ったろ?魅録の事はそっとしておけと』

「違うやい!魅録に誘われたの!」

「なんだあ?」

と間抜けな魅録の声。

「いいのこっちの話」

あたしは魅録に背を向けて、携帯に向かって怒鳴る。

「別になんも言ってないし、浸ってるのに付き合ってんのっ!」

『はあ、そうですか。それはすみませんね。で、お前はそれで、いいのか?』

「ふぇ?」

『悠理の気持ち、知ってるんですよ、僕は』

「ぅっ!」
 
『魅録の気持ちは、すぐには変わらない。だから、お前が傷付くだけだ』

「清四郎には関係ない」

『関係なくはない。仲間なんだし。事情を知ってるんだ』


清四郎はそのまま口を噤んでしまった。
じっとして次の言葉を待っていたけれど、なかなか喋ってくれない。
波の音と風の音だけが聞こえてくる。

もしかしたら、清四郎も聴いているのかもしれないと思った。
だからあたしも、何も口にできなかった。



「悠理」

魅録が首を傾げてあたしを見る。

「どした?電話、終わったのか?」

あたしも魅録を見上げて、首だけを振る。

「清四郎、魅録と代わる?」


『僕だったら・・・悠理を傷付けない』

「えっ?」

『僕が、忘れさせてやる』


!!
ええ~っ!!
それって問題発言!


言葉を失って携帯を凝視していると、魅録がそれを取り上げようとする。

「おい、清四郎なのか?」

『悠理、悠理?』


清四郎の声が聞こえて、思わず携帯を胸に当てた。
心配そうにあたしを見る魅録を見つめ返す。


「誰なんだ、悠理」
「だから清四郎だよ・・・」
「貸せ」
「やだ・・・やだもん・・・」


涙が溢れて、気持ちまで溢れる。

今のコト、魅録に知れたら・・・知れちゃったら・・・


「いいから、貸せ。何やってんだ、あいつ」
「いいってばっ!!」


こうしていることすら、失われるんだ。


「せ、せいしろ・・・切るぞ・・・魅録には、電話さすからさ」

『あ、ちょっと・・・あの、悪かった、悠理。さっきのは忘れてくれ』

「へ?」


なんだ、なんだ、なんなんだ・・・!!
一瞬、頭の中が真っ白になる。


「分かった。忘れるから。切るぞっ!」

『待て待て。本当に忘れられては困るんだが・・・』


あたしは胸が苦しくて、泣きそうになる。
目の前に、大好きな魅録がいる。
想いが届かない、魅録が・・・

「ど、どっちだよ・・・」

『ああ・・・すまない・・・保留にしてくれ』

「考えとくよ、一応。でもさあ、清四郎だってあたしとおんなじになるかも、なんだぞ。
た、例えばさ・・・」

『僕なら、絶対後悔させない自信はある』


・・・・・。
清四郎と、あたし?何だか不釣合いな感じ。


「ふふ、こんな時でも自信満々なんだ」

『どんな時でも、それだけは取柄なんで』


ほんの少し、清四郎との時間が流れる。
今度は、互いの息づかいだけが聞こえた。


「じゃあ、切るね?」

『ああ』


あたしは静かに携帯の電源ボタンを押した。


「清四郎、何だって?」
「後で魅録から電話欲しいって」
「へ?それだけ?」
「うん」
「悠理、あのさ」
「もう、何も訊かないで」


今は。
これ以上は。
魅録への想いが、グチャグチャになるから。

純粋な想いが、なくなりそうだから。



なあ、魅録。
どうしてお前は、チチへの想いが揺らがないの?


あたしじゃあ、ダメなの?



清四郎の、ばか。
自信満々って・・・


想いが・・・フェイド・アウトしそう・・・





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太陽と風と・・・それぞれの想いと・・・

あの時、ちょっと感じたんだ。




海面を撥ね返すような強い陽射しを受けながらデッキで清四郎と冗談を話した後、そっと魅録のいる所に行った。
小さな船の片隅で魅録は壁に背中をつけて、両膝を抱きかかえるように座り込んでいた。
そして、その膝に顔を埋めていた。

あたしは、そんながっかりするような魅録の格好、見たことなかった。


「魅録・・・」


小さく声をかけてみる。


「眠ってるの?なあ?」


太陽の陽射しが、ここにも広がっている。
床も壁も、照らされてる。


「魅録?」


何度声をかけても魅録は俯いたまま、一度だって顔を上げちゃくれない。


魅録・・・


あたしも、眩しいほどに照らされた床にペタリと座り込む。


やっぱり魅録は眠っていた。
スースーって鼻息が聞こえる。
四つん這いになって魅録の傍に来てみても、やっぱり顔は見せちゃくれない。


ショックで眠っちゃったんだ。
あたしもイヤなことがあるとよく眠くなるもん。
テストの前とか、キライな授業の前とか・・・
清四郎んちでやる勉強会の夜もそう。
それと似てんだなあ、きっと。


魅録の傍に座り込んで、同じように壁に寄りかかる。
でも起きる気配がないから、顔をずっと近づけてみた。


魅録からお日様の匂いがする。


あの島で、太陽イッパイ浴びたもんね。
イッパイ、働いたもんね。

お疲れ、魅録。
チチ達、これで幸せになるんだね。
良かったよね。
ねえ、なんか言ってよ。


「わっ!!」


突然船が大きく揺れて、あたしは魅録の腕を取った。
風がバババーッと吹いて、あたし達を通り抜けて行く。


「驚いた、ね・・・」


魅録に話しかけ顔を覗き込んでみたけど、ちっとも起きる気配がない。
それどころか、両膝の間に深く頭がはまっちまった。


なにぐっすり眠ってるんだよ。
あ・・・分かった、現実逃避ってやつだろ?
あの島から帰るのイヤだったから・・・・・



チチと別れたこと、そんなに辛いの?



今度は優しい風があたし達を包み込んだ。
サラサラした風。
目を閉じると、キュンッと胸が痛む。
だから目を開けて、魅録を見つめた。
それから魅録の向こう側にある、澄み切った青い空を。


あたし、なんで胸が痛いのか、分かったような気がする。
分かったところで、どうしようもないけどさ。


まだ胸の痛みが続いている。
この胸の痛み、魅録もおんなじなのかも知れないね。


今ではすっかり見慣れたピンク色の短い髪が、面倒臭そうに揺れた。


出会った頃は、薄茶色のパサパサ頭だったよな。
脱色でもしてたのかな?
ピンクに染めるために。


魅録の髪にそっと触れる為に手を伸ばした時、誰かがあたしの肩を掴んだ。


「よせ。そっとしておこう」
「清四郎?」


清四郎はあたしの腕を引っ張り上げた。


「痛いよ」


強引に肩に腕を回して、さっきまで二人で話していたデッキに連れて行かれる。


「痛いってばっ!!」


清四郎の腕を払い、あたしは背を向ける。
苛立ちがあたしを襲う。
キラキラした海面も、サラサラした優しい風も、ただの苛立ちに変わる。
両手で強く手摺に掴まり、じっと前を睨む。


絶対清四郎なんか見ないもんね。


「悠理・・・」


視界の端っこの方に、清四郎が映る。
手摺に背を預ける、清四郎が映る。


「魅録の想い・・・大切にしてあげましょう」


その言葉が、どうしようもない現実を引き起こした。
突然視界が歪み、鼻と喉が痛くなる。


涙が・・・溢れる・・・


びっくりした清四郎の顔が、モヤモヤした間から見える。
その顔がちょっぴり寂しそうになった時、強い力で引き寄せられた。


「あ・・・」
「泣くなら今、ここでだけ泣け。魅録の前で泣くな」
「・・・な・・・ひっ・・・んで?」
「魅録が、混乱するから」
「だって・・・だってぇ・・・」


清四郎は痩せっぽちのあたしの背中に片方の腕を回し、もう片方で頭を胸に押し付ける。
苦しいけれど、苦しいって言えなかった。
それ以上の想いが、嗚咽となって漏れたから。
今は、清四郎の言うことが正しいって思えたから。


清四郎からも、お日様の匂いがする。
魅録とはちょっと違うけど。


なんだか・・・懐かしい匂いだ・・・


清四郎の鼓動が、あたしに安心を与えてくれた。
不思議だけど、もう大丈夫って思えた。


その時は・・・その時だけは・・・


でもそれと同時に、ちょっと感じたんだ。


清四郎の鼓動にも、あたし達に似た痛みがあるんじゃないかって。


この胸の痛み、すぐに治りそうにない、ね?






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さて本日アップは・・・何の番外編だったか・・・忘れてしまいました。。
web拍手で使用したネタなのは確かです。






grayの渚

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さて、本日アップは季節外れのお話です。。






春を迎える前に

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本日が三回連載のラストです。





冬休みが終わるまでに

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『秋のはじまりに』の続編です。
冬休みが終わるまでには・・・と言う感じ・・・




秋のはじまりに

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ちょっと季節外れ・・・?
でも三回の連載で、季節は春に向かいます~♪