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2017年01月

Be Selfish

目の前の綺麗な花束。
大好きなスイーツ。
欲しかった、手に入りにくい年代物のレコード。

忘れるために自分から望んで機会を作った。
そうして得た出逢いなのに・・・
目の前の優しい笑顔に、どうゆう顔したらいいんだろう。
欲しい物を全て目の前にした今、本当に、心から欲するモノが何なのかが分かるなんて。

あたしが欲しいのは、形がなくって、香りもなくって。
だから目で見て触ったり、顔を近づけたりしても分かんなくて。
お金を出して買えるものでもなくて。
誰かさんの想いとかその人そのモノ!、なんてそんな贅沢は言わないよ。
そこまでは求めない。
だって、求めたって、手に入らないから。
どんなにお金を積んでも、あたしのモノにはならないから。

でも時々後悔するんだよね。
あたしの手もとには、何も残っていないんだもん。

誰かさんとの思い出を忘れるために、持っている全てを捨ててしまった。
メンバーと一緒の写真も、もらったプレゼントも・・・全て・・・想いすらも忘れるために・・・

けど、狂いそうになるほど心が求めるとき、あたしはあったかくて甘い、小さな出来事を思い出す。
それは本当に忘れちゃいそうなほど小さな思い出のはずなのに、痛みを和らげるように心に浮かんでくる。


あれは冬だ。
珍しく底冷えするほど寒くて、乾いたような雪がチラチラと降っていた。
あたしはメンバーと一緒に下校していた。
確か生徒会の定例会議の後で、外は暗くなり始めていた。
野梨子と可憐が先を歩いて、美味しいケーキを食べさせてくれる店を探していた。
その次に美童、隣に魅録、少し後ろに清四郎がいた。
清四郎は誰かと面倒くさそうな話の電話をしていて、それであたしが最後だった。
あたしはケーキよりもお腹がいっぱいになるハンバーガーが食べたくって、それで一番後ろからブーイングしていたんだっけ。
しばらくそうして歩いていて、路地に入って、ちょっとした住宅街に入って。
そしたら目の前の清四郎が急に立ち止まってしゃがみこんだんだ。
あたしはしゃがんだ清四郎の背中に思いっきりぶつかって、ド派手に転んでしまった。

「バッカヤロー!!イテイだろ!」
「悪い悪い」

アスファルトに軽く降り積もった雪がやたらと冷たく感じた。
けれどもすぐに立ち上がれなかったのは、清四郎が普段見せないようなニコニコした笑顔が外灯に照らし出されていたから。
その笑顔はあたしを覗き込んでいて、ナンだかいたずらっ子の男の子みたいだった。
あたしは、すっかり見とれてしまっていたんだ。

「ほら、これ。こんな所に珍しい物が見えたんですよ」

清四郎の大きくても綺麗な手が、何かを隠すように握られている。

「な、なに?」
「悠理の大好きな物」

あたしはしりもちをついたまま、両手を差し出す。

「なにか落ちてたの?」

清四郎はニコニコしたままあたしの両手に静かにその手を置く。
冷たかった手は、温かい清四郎の手が触れたおかげで一気に温まった。
でも、あたしの手のひらに固い何かが落とされると、清四郎の手が離れ、夜の冷たい空気が間に入り込んだ。

「なんだー?」

薄暗い外灯に照らし出されたのは、季節外れのドングリ。
雪の上でもつるつるの表面は乾いて光っているようだった。

「雪の上に落ちてました。きっと珍しいドングリを見つけた子供が、落としちゃったのかも知れませんね」
「うん・・・」

正直、清四郎の言う意味が理解できなくて、ぼうっとしていたんだと思う。
清四郎は今度は困ったように笑うと、あたしの腕を引き上げながら同時に立った。
バランスを失ってよろめくと、開いたままの両手からドングリが転がり落ちた。
あって思ったとき、あたし達の横を通り過ぎた車のタイヤが、更にどこかへドングリを飛ばした。
驚いて振り返ったあたしの肩に手を回し、清四郎の腕の中に収まるような形で立つと、清四郎の顔が近づいた。

「危ないから、諦めよう」
「うん・・・」

そうして・・・そうして・・・その後、どうしたんだっけ?
清四郎はあたしから離れ、ドングリは行方が分かんないまま置いてかれて、あたしはまた、みんなの後を黙って付いていったのかも知れない。


この小さな思い出と一緒に、あの時のドングリがせめて手もとにあったのなら、どんなに心強かっただろう。
あの後から清四郎への想いに至るまで、すっかり忘れていたくせに。
何気なく通り過ぎた出来事が、こんなに狂おしいほど愛しいなんて・・・



目の前の優しい笑顔の持ち主は、あたしのわがままを全部叶えてくれる。
清四郎の気持ち以外の欲しいもの、全て。

ごめんね。ありがと。
でもいらないよ。
本当は、清四郎以外、いらないんだ。


おっきな想いの行き場がなくて、あたしは涙を両手で拭う。
だって本当なら、女の子だったら嬉しくて仕方がないはず。
会う度に花束をプレゼントしてもらって、欲しい物を手に入れてもらって、好きな食べ物を用意してもらって。
次のデートも自分が思うままなら、こんなに嬉しいことないよ。
嫌いになんてならずとも、好意は絶対に持つはず。
なのにあたしったら、充たされれば充たされるだけ、全く別のモノが欲しいと心が叫ぶ。


どうか許して。
もうわがままなんて言わないから、この小さな思い出だけを支えに生きていくから、
せめて目の前の優しい笑顔の持ち主が、あたしがいなくなっても幸せになれますように・・・

それすらも、わがままな言い分なんだろうけれど。




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これから

真夜中に目が覚めて、ふっと思う。

“初夢っていつ見た夢?”

たった今見た夢がそうなのだろうか。それとも昨日のがそうだったのだろうか。
もし今見たのがそうだとしたら・・・

“正夢・・・”

いや、見た夢が実際に起こるのが正夢で、夢そのものしかまだ見ていないのだから、どうだろう?
いや、やっぱり違う。
実際に起こりうる現実を考えすぎて、その延長で見たに違いないと考え直す。

さっき夢を見た。
あたしの知らない、でもあたしの所有する建物の前に車が停まった。
車には二人の人物が乗っていて、その中の一人が車から出てきた。
野梨子だった。
野梨子はあたしに気づかないでどこかに向かって歩き始めた。
あたしは声をかけようと、大きな声を出して「野梨子!」って叫んだけれど、それにも気づかないようにどこかに行ってしまった。
あたしは車に残るもう一人の人物を知っていた。
それは魅録だ。
あたしは魅録に聞いてもらいたい話があったし、魅録に会いたかったし、魅録があたしに好意を持っていたことを知っていた。
だからこそ、あたしは魅録にどうしても会わなければいけなかった。
停まっている車に近づき、あたしは窓を覗き込んだ。
魅録は縁のついた帽子を深く被っていて、あたしには気づいていない風だった。
「魅録、久しぶりだね」って声をかけたけど、返事がなかった。

「ここさ、あたしんとこの建物なんだ。寄ってかない?」

そう言ったとき、気づいた風にして手をあげた。
そして車から出てきた。
魅録は真っ黒なジャケットとそれに似合ったジーンズとブーツを身につけていた。

「俺さ、防衛大に行くことに決めたんだ」
「え?みんなと同じ、プレジデント大って言ってたじゃん!」
「そうだったけど、野梨子と相談して決めたんだよ」
「だって魅録、これからも一緒だって、みんなとおんなじだって約束しただろ!!」
「清四郎だって医大に変更したって言ってたし。俺も自分の将来をきちんと考えたらさ。野梨子も賛成して応援してくれるって言ったしね」
「う、嘘・・・清四郎も?清四郎だってみんなと同じプレジデント大で、将来は剣菱に来て豊作兄貴と経営するって約束してくれたのに」
「やっぱり自分の親父さんの病院を継ぐのが普通の考えだろ。諦めなよ、悠理。
みんなそれぞれの将来があるんだからさ。お前だっていつかは剣菱を豊作さんと共に継ぐ身なんだろ」
「でも・・・でも・・・」

そこで場面がスイッチする。
夢が途切れ、“初夢”の件にたどり着く。

今日は確かお正月の二日だから、どうなる?
元旦の朝じゃなくて、二日にかけての夜だからどうなんだろう?
それとも二日の朝だから、これって初夢とは違うのかな?

どんよりとした気持ちでベッドから出ると、時間はもう二日の日の午前九時を充分に過ぎていた。

・・・・・。

ダイニングでおせちのお重を食べ、お雑煮を食べた。
お汁粉も食べようとしたけれど、それはお昼かおやつに食べることにする。
食後のお茶を飲んでから中庭に出る。
普段よりもずっと静かなのは、父ちゃんも母ちゃんも遠征していていないから。
恒例の行事としての新年会もなく、仰々しく門前が飾り立てられてもいない。
今年は豊作兄貴と静かに年を越し、初詣にはまだ行っていない。
毎年仲間と過ごすお正月も、一応は受験生と言うことで今年はそれぞれ。
あたしはイッパイに冬の清々しい青空に両手を伸ばす。
空は澄んでいて高く、とても届きそうにはないけれど。

「うぁっ、と。きもちいー」

こうしているだけで、イヤなことを忘れちゃいそう・・・

「明けましたぁ」

突然後ろから声をかけられて、ビクッと体が強ばった。

「せーしろーだぁ」
「何ですか。新年早々間が抜けたような声出して」
「だってぇ」
「だってじゃないでしょ」
「だって清四郎だって“明けましたぁ”なんて後ろから声かけて」
「あはは。そうだ。じゃあ改めて」

清四郎はあたしの真正面に立って丁寧に頭を下げる。

「悠理。あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します」
「あ、どうも・・・あたしこそ・・・よろしくお願いします」

深々と頭を下げて、それから顔を見合わせて声をあげて笑った。

「でもちょっと元気がない感じ。悠理の大好きなお正月でしょ?おせちやお餅はたくさん食べた?」
「うん、食べた」
「食べすぎて調子が悪いの?」
「ううん・・・・」

それからあたし達はリビングの方へ戻りながら、今朝(正確に言えば真夜中か朝方)の夢について話した。

「僕と魅録が?」
「うん。あたしや野梨子達とは違う大学行くって」
「ふうん・・・」
「ねぇ、そんな夢とおんなじこと、ないよね?」
「・・・・・」
「や、やだぁ。何とか言ってよぉ」
「実はね、全く当たっていない訳でもないんですよ」
「え・・・?」

あたしはすっかり気落ちして、リビングの窓辺にある木製のベンチに座り込んだ。
しばらくそうしていると、清四郎があたしのすぐ横に座って肩を抱いてくれる。
ちょっとだけ顔をあげると、優しく微笑んで見つめる瞳と視線が合った。
けれど・・・ナンだか、知らない人の顔のように見える。
見慣れた顔のはずなんだけれどね。
それから視線を逸らして、さっき見上げた澄んだ青空や、遠くの光景を見てみる。
やっぱり見慣れているようで、全く違った風に見えるのはナンでだろう?

「最後まで聴いて、悠理。確かにね、魅録とは随分前から悩んでいて。話し合ったり、自分達の将来について真剣に考え直したり」
「や、だ。聴きたくないもん」

止めどなく流れてくる涙を手のひらで拭いながらあたしは言う。
清四郎はあたしの肩をしっかり抱きながら、時々優しく擦ってくれた。
冷え始めていたあたしの体は、その場所だけ温かさを取り戻した。

「でも、僕達、腐れ縁って言うのかな。やっぱり離れられないですよねって」
「ん、うん」
「魅録だってそうだし、それに僕は経営にはとても興味があるし」
「うん」
「僕達はいろんな形で家族との生活を守ることはできるって思ったんです」
「うん」
「大学だけが全てではないでしょ?」
「ん・・・だから・・・?」
「だから、僕も魅録も、悠理達と同じ聖プレジデント大学に進学するって決めました」
「ほんと!?やったーっ!!」

あたしはベンチから跳びはね、思いっきり清四郎に抱きついた。
うわって声をあげて驚いたけど、すぐに立ち上がってぎゅって抱き締めてくれた。

「夢の後で、ホントに、どうしようって悩んだんだ」
「うん」
「これからどうやって行こうって、真剣にさ。だって、清四郎や魅録のいない生活なんて考えてみたことないし」
「そうか。そうだろうね」
「でも本当に良かったぁ」
「僕も魅録も、悠理達がいない生活なんて考えられませんよ」
「正夢じゃないよね?」

清四郎はもう一度ぎゅって抱き締めるようにあたしを抱き上げ、それからゆっくり離れて行く。
やけに熱くなった体が、ちょっとだけ寒くなる。

「それって逆夢って言うんだと思う」
「逆夢」
「ええ。見た夢と反対の出来事。正夢っぽいところもあるけれどね」
「ふうん」
「悠理にいたって正夢だけは、勘弁ですから」
「はぁ。ホントだぁ・・・」

それからあたし達は顔を見合わせて、もう一度声をあげて笑った。

「そう言えば清四郎、今日はどうしたの?」
「ああ。豊作さんに借りていた本を返しに来たんです」
「そっかー」
「将来の剣菱を担うためにね。今から猛勉強です」
「あっは。でも大変だー」
「何言ってるんですか。悠理もでしょ!!」
「ええっ!?」

あたしの腕をつかもうとする清四郎から逃げるようにリビングに入る。
部屋の中はスッゴク暖かくって、ホッとした気分になった。

「ねぇ、清四郎。これからのことも大切だけど今日はまだお正月。おいしいお汁粉をおなかイッパイ食べようよ♪」
「ま、そうですよね。お正月は楽しまなくては、ね」

清四郎は楽しそうにウィンクする。
あたしはとっても嬉しくなって、また清四郎に抱きついた。





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