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2018年12月

今年、最後に


二学期末の大掃除をサボって冬休みに突入したら、生徒会長に呼び出された。
運動部の各部室の点検と、運動部部長の机の整理整頓くらいしろと。
高等部二年の時で、ちょうどあたし達が中心となって生徒会を運営する時期になっていた。
まだまだなれない働きと、まだまだなれない…生徒会長…
ご親切に、あたしを呼び出してから机の整理整頓が終わるまで付き合ってくれている。

「もう終わるから。先帰って、どーぞ」
「ちゃんとやった?」
「もちろん!部室の点検も、机も片付けた」

生徒会長はぐるりと目線を動かして、あたしの机の周りを確認した。  

「ま、いいでしょ。いいことにします」
「やった!」
「悠理は先にお帰りなさい。僕は今から職員室へ報告があるから」
「戸締まりくらいしてあげる」

珍しくあたしを見て、少しだけ笑う。
結局二人でテーブルを片付けて、消灯もする。
そして生徒会長は職員室へ、あたしは昇降口へと向かう。
冬休みの学校は静かで、夕方前なのにうっすらとしている。
今から魅録と約束がある。
制服は、魅録の家で着替えるつもり。
いつも通りに。
昇降口で靴を変え、手にしていたダウンを着込む。
今日は手ぶらで帰る。
荷物は邪魔だし、着替えは魅録の部屋にある。
外に出ると、痛いほど風が冷たかった。
空を見上げると、やっぱり。
クリスマスに必要な雪は降らずに、こんな時に。
灰色の空からチラリチラリ。

「降って来ましたね」

声に驚いて振り向くと、生徒会長が黒いコートを着込んで立っていた。

「早いね。先生は?」
「いなかったから。一緒に帰りましょう」
「ごめん、今から魅録んち」
「そう、遊ぶの?」
「うん」
「じゃあ、反対方向ですね」
「うん」

あたし達は校門まで白い息をはきながら歩き、そして止まる。

「もしかして、来年までさよなら?」
「あ、そうだ。元旦までさよならだ」

来年の元旦は、倶楽部みんなでお参りに行く予定。

「悠理、良いお年を」
「うん。清四郎も、良いお年を」

互いに手を振り、背中を向ける。


あの時、清四郎も誘えば良かった。
そうすれば、もしかしたら、運命は、少しだけ変わっていたかも知れない。
うつろい行く想いに翻弄されずに、誰も傷つかず、直接的に、あたしと清四郎は… 


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ある雪の日のできごと

高等部一年の最初の冬。

メンバーになれてるようで、まだなれてない。
親友と呼べるのは魅録だけ。
初等部から苦手意識たっぷりのお二人さんとは、ギクシャクが続いたまま。
あたしを理解しようとしている野梨子には感謝している。
でも清四郎との距離は、どうかなと思う。
アイツは、こんなあたしをどう思ってるんだろう。
守ってくれたのは、学園長との一件。ただの一度。
まぁそれをきっかけに、今があるのかなと思うけど。

どうしてそんなことを考えているのかというと、生徒会の資料を清四郎の家に届ける途中だから。
頼んだのが先生で、数学担当だった・・・赤点取ったばっかりの・・・

街はもうクリスマス一色で、キラキラしたイルミネーションがきれい。
歩道を歩く人たちも、なんだか楽しそう。
けれどあたしの心は、ちょっぴりどんより。
まだまだ苦手意識たっぷりだからかな。
街を抜け、小さな商店街を進み、住宅地へと歩く。
外灯が少なく普段は真っ暗だろうけど、ところどころに装飾されている庭園用のイルミネーションが道路を少しだけ明るくしていた。

今年のクリスマスはメンバーと過ごす約束をしている。 
美童の家で、可憐と野梨子の手料理。  
きっと、楽しくなる。
魅録も来るし、ギクシャクなんてならない。

やがて目の前に大きな病院が現れる。
そこだけは外灯がいくつもあり、奥の待合室と思われる前の中庭には、やはりクリスマスイルミネーションが飾られていた。
病院の広い敷地のアスファルトの私道を通りすぎ、しばらくすると院長先生の邸宅。
奥ゆかしい、って感じの。
あたしは、気が重いまま玄関のインターフォンを鳴らした。
一度だけ鳴らし、しばらくすると聞き覚えのある声が答えた。

「は~い」
「剣菱ですけど・・・」
「ああ、悠理ちゃん。清四郎ね?今呼ぶわ」

ドアの向こうで清四郎を呼ぶ声が聞こえ、間もなくそのドアが開いた。

「どうも。わざわざ、どうも」
「資料を渡してって、先生が」
「ああ、さっき学校から連絡が。寒いから中に入って」
「もう行くからさ」

資料を押し付け後退ろうとすると、奥で清四郎の姉ちゃんが呼び止めた。

「清四郎、あがってもらいなさい。わざわざあんたのために寄ってくれたんでしょう?」
「大丈夫です。遊びに行く途中だから」
「そんなこと言わないで。お茶でも飲んでいって。おいしいケーキもあるんだから」
「遊ぶって魅録?時間ないの?」
「ううん、いや・・・うん」
「寒いから入って」

あたしはドアを大きく開ける腕をすり抜けた。

「雪が降っているの?」
「え?」
「だって悠理の頭、少し濡れてるみたい」

後ろを振り返ると病院の中庭のイルミネーションが見える。
キラキラ光るライトの前には揺れる影。
すぐ後ろにいる清四郎に、ちょっとだけドキドキが走る。

「悠理、上、上」
「うん?」

見上げれは、雪。
チラチラと舞う雪の向こう側には一面に星空が見えた。

「雪~。気づかなかった。ずっと学校から歩いて来たけど」
「暗いから。でも珍しいですね。クリスマス前に雪なんて」

雪と星空に見とれていたら、触れるほど隣に清四郎が立っていた。

「つ、積もるかな?」
「さぁ、難しいでしょうね。星空も見えちゃってますし」
「クリスマスも、こんなんならいいな」
「そうですね。クリスマスにはそうなると、いいですね」

あたしと清四郎は、しばらく玄関先で空を見上げる。
そうしている内に、あたしはド派手なクシャミをしてしまった。

「ほらほら、やっぱり。ちょっと中で休んで行きなさい」
「でももう遅いから。魅録も待ってるし」
「魅録・・・」

その時初めて、魅録への罪悪感と独りよがりな想いが交差する。

「分かった。今度はゆっくり遊びにおいで」
「ありがと。そうする」
「傘をお持ちなさい」

そう言って玄関に入ろうとする清四郎から離れ、あたしは一気に、今度は確かに後退った。

「大丈夫。傘はいらない」
「濡れますよ」
「雪だもん」
「風邪ひきかけてる」
「濡れる前に、走る」
「あ、ほ・・・」

あたしは翻り、また呼び止められないように走り出す。

「悠理!!!ありがとう!また明日」

清四郎が、走るあたしの背中に呼びかける。
あたしは・・・やっぱり振り返らないで、代わりに大きく手を振った。



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おわる、しあわせ

いつの間に、季節が変わったのだろう。

玄関先の松の木の下に、重なる枯葉を見て気付く。
見上げれば弱い陽射しが辺りを照らし、低い影が午後の日の短さを覚えさせる。
秋になったとばかり思っていたが、すっかり、季節は冬に変わっていた。

何度も、何年も、この季節は淋しい時だと感じていた。
春の希望も、夏の激しい想いも、秋の切なさから生まれる淋しさは、当たり前の巡りだと思っていた。
けれど玄関先の光景は、現実をそのまま受け入れられるほど優しかった。

もう、多分、今までのようではない。
もう、多分、あの日々のように傍にはいられない。

もう、多分、逢えない。

だからこの事実は、もう、苦しまなくても良いと言う現実なのだ。

逢えない、だから、この先はない。
逢えない、だから、終わる。

終わると言う事はこれ以上何もなく、だから、苦しまなくても良いのだ。

私は同じ事を何度も心の中で繰り返す。
喜びの叫びを、声にならない声で、何度も。




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