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2019年07月

それぞれの間に

親友だから離れることはないって思ってた。
親友はずっと親友だから、何も変わることはない。
もちろん今だってそうだけど、気持ちは何だか落ち着かない。

「野梨子と付き合うかも知れない。前から気になってたからさ、ちょっと伝えてみたんだ」

魅緑が突然あたしに言う。
何だか胸が、ぐぅって押される感じ。

「へぇ、で野梨子は、なんて?」
「考えてみるから、時間を下さいだって。でも今度の日曜日に遊びに行くから、脈ありだな」
「ふうん」

魅緑ったら、すごく嬉しそう。

それから日曜日までの間、魅録はいちいちあたしに野梨子とのラインや電話での内容を知らせてくる。
もちろん全部ってわけではないんだけど、訊いてもいないことまでしゃべってくる。

「ふうん、ふうん、良かったね~。そこまで話せてるんなら、もう付き合ってるようなもんじゃない?」
「ま、そうかもな。でもさ、みんなと一緒なら平気だけど、俺と二人きりって言うのはまだまだ恥ずかしいって。
今度の日曜日もさ、お前も行く?」
「ヤダよ。なんであたし?清四郎でも連れてけば?」
「清四郎も行くならお前も行く?」
「ヤダね。可憐とか美童にしといて」

日曜日のことは最後は分かんない。
誰か連れて行ったんだと思う。
魅録が野梨子との関係を深めようとする限り、あたしは前みたいに付き合ってはいけない。
そんなこと、バカでも分かるよ。

それに・・・日を追うごとに魅録だってよそよそしいような気がする。

無意識だと思ってて、でもそれは親友の特権って知っていて、だから黙っていたんだけど・・・
魅録は自然にあたしに触れてきていた。
例えばそれは頭だったり襟足だったり、伸びすぎた髪の毛の時もあったけど、魅録はいつもあたしに触れていた。
多分触れていると安心するだと思うんだ。
そう、まるで、甘えん坊の子供みたいに、ママに触れていると安心するみたいに。

けれど無意識に伸びた魅録の手は今、行き場を失ったみたいに止まってしまう。
引き戻された手はまじまじと見つめられ、背中に隠されてしまう。

時々、普通のカップルにあるように、二人が息詰まるような日は、魅録はあたしと時間を過ごす。
他愛もない話をして、笑って、街をブラブラ歩く。
そして野梨子を忘れたようにあたしに触れてくる。
無意識に・・・?それとも?
だってあたしは魅録のすべてを知ってるから、離れて行く手も触れる手も、体中の神経を集中させてしまう。
だから、魅録の手が触れたあの日、あたしは立ち止まってしまったんだ。
立ち止まって、魅録を振り返って、ギュって見つめてしまった。
驚いた魅録は、でもすぐそんな自分に気づいたみたいだった。

「ごめん。たまには、さ。ちょっとその、気が抜けちゃって」
「いいよ、別に。野梨子がいいんなら、だけど」

悠理、今夜は話があるんだ。

久しぶりの魅録の部屋。
今では、野梨子の気配がある部屋。

「野梨子が好きなんだ」
「知ってるよ、最初から」
「けどさ、悠理とも一緒にいたい。今までみたいに、触れていたい。お前といると安心するんだ。
野梨子とは違う、安心感があるんだ」
「はぁ?ダメだよ。バカじゃない?あたしより」
「お前よりかは、頭いい」
「頭いいヤツが、そんなこと言うか?」

これってどういうことだろう?

魅録の想いは、魅録自身にもあたしにも分かんない。
でも、たぶん、きっと、野梨子への想いがあるなら、あたしとはダメなんだよ。
魅録の言葉は正直嬉しい。
野梨子のことがあってから、意識して距離を置いていた数日。
けれどこうして前みたいに過ごせたことが、こんなにも嬉しいなんて。

もちろん自分の想いは魅録には伝えないまま、その夜は帰った。



じゃあ、清四郎と野梨子はどうなんだろう?
野梨子が魅録を想い始めても、清四郎とは今まで通りなんだろうか?

あたしは清四郎の家に行った。
清四郎はニコニコしてあたしを部屋に入れた。

「へぇ、魅録がね。意外とやりますね」
「野梨子が好きなくせに、あたしといると安心するって。なんかずるくない?」
「どうなんでしょうね。野梨子は彼女で、悠理は妹みたいな感じ?」
「清四郎と野梨子はどうなの?やっぱり安心する?」
「安心っていうか、面倒くさくないって所ですか?相手をよく知っているからこそ、余計な気遣いがいらないとかね」
「ああ、それなら分かるよ。魅録ったら、野梨子をスゴク気遣っているもん」
「それなんじゃないかしら。気を遣い過ぎて、ちょっと悠理で息抜きしてるんでしょ」

それならね・・・それなら、でも、いいのかな・・・

「魅録の気持ちは分かった。でもさ、やっぱりダメって思うよね」
「悠理も意外と真面目ですねぇ」

そう言って、清四郎は優しく微笑みかける。
すべてはお見通しって感じで。
それから大丈夫?って訊いて、あたしの肩に腕を回した。

そうしたら、そうしたら、あたしは急にわぁっと大声で泣いてしまった。
自分でもびっくりするくらい大声出して泣いてしまった。
涙も鼻水もいっぱい出て、それなのに清四郎は、やれ汚いだの声が大き過ぎるだの言いながらティッシュであたしの顔をゴシゴシ拭いた。

魅録が触れることで、あたしも安心していた。
でもそれは、魅録とは違った意味だった。
魅録は息抜きで、あたしは本気だったんだ。
本気で魅録が好きだから、触れられることが嬉しかった。
だって、誰だって、好きな人に触れられたら、嬉しいでしょ?

「魅録も悠理が好きなんですよ。野梨子のこともそうでしょうけれどね。まだきっと、どちらが本気か分からないんじゃないんですか」
「そんなことってあるの?好きなら・・・その人だけだよ」
「悠理は大人で、魅録は子供なんでしょ」
「分からないな」

すっかり泣き疲れて、あたしは清四郎のベッドに深く座り込む。

「まだいろんなことを決めてしまわなくても良いと思いますけどね。
人への想いは複雑で、まして男女間なんて難しいでしょ?好きか嫌いかどっちかって言われてもね」
「うん、うん、分かるよ。あたしだって魅録が好きだけど、清四郎も美童も大好きだもん」
「好きの意味合い、度合いって言うのかな、はそれぞれでしょうけどね。今すぐはっきりはね。
魅録と悠理だけじゃなく、野梨子だって絡んでくるわけで。彼女はどう感じているのか分からない。
意外と、今まで通りでいたいなんて思ってるかも」

もう少し待ってみたら?

清四郎は言う。

その間、お三方は辛いでしょうけれど、急ぎ過ぎて誰かが傷付いてもいけない。
それにね、悠理・・・
僕も悩める皆さんの仲間入りするかも知れません。
僕だって魅録に負けないくらい、悠理に触れていますもん。




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