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2019年12月

想いの向こう

クリスマスパーティーの準備は、くじで決められた相手と行う。
普段は幼なじみの清四郎とばかりといる私は、性格が合わなさそうな魅録とでは気疲れしそうで仕方なかった。
いや、彼といる分には問題ない。
彼のやんちゃな部分も、どこか真っ直ぐな気持ちも、不器用な真面目さも嫌いではない。
むしろ彼が、私のような人間が得意ではないはずだから、きっと疲れてしまうだろうと思う。
もしかしたらお互いが気を使い、せっかくの時間を無駄に過ごしてしまうのではないかと、もう、疲れてしまう。
冬休み間近の午前授業を終え、私は魅録と午後に駅前で待ち合わせる。
彼は自動車免許を既に取得しており、駅のレンタカーショップを利用するとのこと。
私は父様と昼食の約束があったから、駅前で都合が良かった。
私達は車で、普段行かないデパートを何件か走り、ツリーの装飾やライトを買った。
それから初めて通る街の喫茶店でお茶を飲み、休憩をした。
魅録はブラックコーヒーで、私はレモンティを注文する。
届いたカップには、小さなドライフルーツケーキと、クッキーが添えてあった。
店内は今の季節にふさわしい聞きなれたクリスマスソングが、失った恋に残る彼女への想いを歌っていた。

「悠理と清四郎でクリスマスケーキなんて、大丈夫かしら」
「悠理の家でケーキを用意するんだろうから、二人が一番楽だろ」

私は魅録との会話が繋がるように頭を巡らせる。

「可憐達は、どうかしら?」 
「絶品のローストチキン作るんだろうな、可憐と美童なら」

今年が高等部最後のクリスマスだから、パーティは生徒会室と決めていた。
二学期の終業式の後、皆で持ち寄って行う。
私と魅録は明日の授業の後からツリーの飾りつけを行うつもりでいる。

「クリスマスプレゼントは買ってますの?」
「まだ。野梨子は?」
「まだですわ。この後、どこかで見つけようと思っていますの」
「一緒に行く?レンタカー返すには中途半端な時間だし、ちょっと遠くまで足を延ばすこともできる」
「ええ、魅録さえ良ければ。喜んで」

私の目の前にいる彼は、私を見つめ、とても嬉しそうに微笑んでいる。
こんな優しい笑みは、初めてのような気がする。
普段悠理といるときは、こんな表情をするのだろうかと思ってしまう。
これからの予定が決まり、私と魅録はケーキとクッキーをほおばった。
お互いの会計を済ませ、駐車場に戻る。

「どこに行きますの?」
「うーん、もう少し南へ。以前から気になっていた雑貨屋があるんだ。きっと野梨子なら気に入るし、良い物がありそう」
「入ったことはないんですのね」
「悠理とツーリングの時、見かけてね。まだ入ったことはない」

魅録は運転席へ、私は助手席に座る。
シートベルトをきっちりつけ、安全を確認するとエンジンをかけた。
ゆっくりとフロントが進み、道路へと進む。
夕方近い県道は往来が激しくなり始めている。

「車が多いですわ。右折は難しそう」

彼は首を左右に何度も振りながら、笑顔で答える。

「大丈夫。必ず車が切れる瞬間があるんだ。どこかの信号が必ず変わるから、車は切れるようになる」
「なるほど」
「同じ状態は続かないからね」

ほら、ね?

魅録は車が切れた瞬間を見つけ、ハンドルを右へと回す。
まるで一瞬、私達の周りは時間が止まったように動きがなく、音も消えた。

同じ状態は続かないから。

この言葉が私を複雑な気持ちにさせる。
今の状態。
仲間、学校・・・そしてこの想い。
私は誰に向かってこの気持ちを馳せているのだろうか。
幼友達?隣にいる人?
私はフロントを通り過ぎる風景を見つめるふりをしながら、想いを巡らせる。
突然生まれたこの想いは、誰に向かったものなのだろか。
そしてこの狭い空間で、これからどんな会話が行われるのだろう。

野梨子、と呼ばれた自身の名前を、初めて愛おしいと感じた。



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