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それぞれの確かな想い

アイツの所為で、週明けは大変だった。
だって・・・
イタズラに吸われた下唇に、斑点が出来てしまったから。
日曜日の朝に気が付いたんだけど、すぐに治ると思った。
でも月曜日の朝になったら、赤紫から黒ずんだ紫色に変色していた。


まさかあたしが可憐みたいに真っ赤な口紅を付けるワケにもいかず、
デーモン小○のようなメイクをする訳にもいかず、結局マスクをして登校した。
それでもって何とか放課後まで部室を避けた訳だけど・・・
二度も誘いを断るのも悪くて、同じクラスの魅録に誘われるまま、いつものように部室に足を運んでしまった。
そうなると、お決まりの可憐の手作りお菓子。
ふわふわのシフォンケーキに、思わずマスクを外してしまった。


「あら、ちょっと、悠理、どうしたの?リップ?でも、何か変ね。怪我?」


可憐がいの一番に気が付きやがった。


「本当。どうしましたの?ご自分で噛んだとか・・・」


野梨子も近付いて来た。
あたしはえへへと笑ってみせる。
ちょっと唇の端が歪んで、顔が熱くなるのが分かる。


「そうなんだ。飯食ってたら間違って噛んじゃった」
「普通、噛むなら舌よね」
「でも、悠理ですもの」
「そうよね、悠理だもんね」
「そうだよ、あたしだもん!」


あはは~と笑って・・・誤魔化せたと思ったらっ!!


「どうかな~。あつ~いキッスでもして吸われたんじゃないの?」


やっぱり美童だ、美童だよっ!


「そ、そんなワケないじゃん。誰がソンナコトするかよ。気色悪いなー」
「そーよー。誰が悠理とキスなんてするのよ。逆に噛まれちゃうわ」
「悠理だってちゃんと女の子だよ。年頃のね。だろ?清四郎」
「・・・・・そう、ですね」


チラリと清四郎を見たけど、そ知らぬ顔で新聞を読んでる。


おい!お前の所為なんだよ!
ちゃんと助けろ!
って、どうやって・・・?
魅録~、ちょっと話をかえてくれ~。


今度は魅録を見たけれど、何故か真っ赤な顔してあたしを凝視してる。
どーしたんだよ?何があったんだよ・・・


「魅録ったら真っ赤な顔して。チチとのキスでも思い出してんの?」
「!!」


そう・・・そうなんだ・・・
チチとね・・・知らんかったよ・・・


急に顔の熱さが冷めた。
何だか胸が苦しい。
魅録は真っ赤な顔のまま否定してるけど、どっか嬉しそう。
まあ、魅録のおかげで的から外れたけど。

魅録から視線を外すと、今度は冷たい目線とぶつかった。


あ。


更に別の方を見る事にする。
美童がニヤニヤしながらウィンクしてきた。


・・・・・。


あたしはこの空気に耐えられなくて、部室を出る事にした。
もちろん、黙ってね。
そうっとドアへ向かったけど、以外にも声をかけたのは、話題の渦中にある魅録だった。


「待てよ、悠理。ちょっと話があるんだ。一緒に帰ろうぜ」


振り向くと、魅録はもう立ち上がってこちらにやって来る所だった。


「話って?」
「うん、後で。じゃあな~」


魅録は肩に腕を回して、もたもたしているあたしを強引に部室から出した。
部室から出るほんの一瞬、清四郎と目が合ったような気がした。
ちょっと、胸が痛んだ。






夕方の児童公園。
子供達と走り回って遊んだ後、あたし達二人だけが残された。
夕陽がまだ、遊具をほんの少し照らしている。
だから二人でジャングルジムの上まで登った。
魅録のピンク色の髪が、土曜日の明け方のように真っ赤に染まっている。
その額も、肩も・・・


「魅録、話ってなあに?」


あたしは訊く。
なんでだろ?胸がドキドキしてるよ。


「うん・・・チチの事なんだ」


あたしは、胸が何かで突かれたように痛む。


ああ、やっぱり・・・会いに行きたいんだね・・・


「いいよ、いつでも。父ちゃんに言ってやる。会いに行きなよ」
「違うんだ、悠理。その事、ありがとな。でも、違うんだ」
「なーに?」


魅録は照れたように空を仰ぐ。
それから、ジムに座りこんだ。
あたしも魅録の隣に座った。
制服着たデカイ二人が、こんな高い所に座り込んでいるなんて、なんか滑稽だ。


「昨日、ゆっくり考えたんだ。彼女の事。正直、悠理の言葉に甘えようかなっても思った」
「うん、それでいいじゃん。そうしなよ」
「いや、やっぱこのままがいいなって考え直した」
「なんでさ?」


気持ち良さそうに夕陽を浴びて、思っていた以上に彫りの深い顔が照らされている。


「それが、チチと俺の幸せだって思えたから」


魅録のその言葉が、あたしを決定付けた。
悲しいとか、悔しいとか、羨ましいとかじゃなく。

今あたしが感じているのは、この間までの恋の苦しみではない。
魅録が受けている感情やあの島でのチチとの別れに比べれば、
あたしの魅録への想いや諦めの悩みなんか小さくおどけたものになって行くように思えた。
それに魅録に想われているチチだって、一国の王女としての逃れ難い運命の支配を受けてるんだもの。

例えもう二度と・・・チチに会えなかったとしても・・・
魅録はきっとチチとの出来事を、生涯大切に胸に抱いていくんだ。
互いを想い合った美しい思い出として。


遠くのビルの谷間に沈みがかっている夕陽を見つめている魅録は、とても綺麗。
まるで清浄な気持ちを表しているみたい。

きっと別れも悲しみも受け入れて、チチとの出逢いに感謝してるんだね。
だって、今の魅録、すっごく幸せそうに輝いているもの。

チチも今頃、おんなじ事を思っているんだろうな。


国境も時空も越えて、二人は愛し合ってるんだね。


あたしも魅録が見つめる夕陽に視線を移す。


「夕陽、綺麗だな」


あたしは言う。


「そうだな」


魅録も言う。


「でも、悠理も綺麗だ」
「え・・・?」
「なんか、大人っぽく見えるぞ」


一瞬戻した視線を、もう一度夕陽に移す。


「だって、大人になったもん」
「そうか?そう、かもな。うん、そんな感じがする」
「きっと、魅録も大人になったからだ」
「うん」


大好きな魅録の褒め言葉はとっても嬉しかった。
でも、もう、恋のトキメキとは違う。


魅録、ありがとう。

あたしもいつか、魅録のような恋をしたいって思うよ。
今までのあたしからは考えられないほど照れくさいけれど、本当なんだ。
魅録のように綺麗な心で人を好きになって、同じ心で好かれたい。





あたしと魅録は、児童公園で別れた。





家の裏門に着いた時そこにいたのは、雨に濡れた迷子の子犬みたいな顔の清四郎だった。
あたしは思わず、駆け寄って頭や顔をメチャクチャに撫でたくなった。
別にペットって意味じゃないけれど。


今なら・・・清四郎の気持ちを、素直に受け入れる事が出来そうな気がした。






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