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recon・・・

ふと思い付いて以前使っていたスマートフォンを手にしてみた。
ベッド脇のチェストの引き出しに入れたままで、白ロムだが時々無線機能で使用はしていた。
携帯電話で友達と話しながらネットサーフィンしたい時とか、普段使いを手元に置き忘れた時、とか。
不思議なもので、電話会社と契約を解除してICカードを抜いた途端、アドレス機能が失われてしまった。
それによってメールも機能をなさなくなった。
できる限りのことを施したけど、再起することはなかった。
けれどちょうど良いと、彼女は思った。
思い出が簡単に甦っては、それらの日々を忘れることが不可能だから。
電源は入れたままだった。画面をフリックさせてホームに入る。
見慣れたホーム画面とは違った。メインメニューがいくつも並べられている。
今では使わないアプリの数々。
画面右下に、以前はホームにショートカットしておいたメールアプリ。
けれどもう機能を果たさないから、削除してしまった。


そうか、こんな所にあったんだ。メインとは、かけ離れた場所。


タップしようと、でも思い直す。
あの日、何度もそうしたけれど、エラー表示しかでなかった。
もうあの時のような切ない思いなんてしないのだろうけど、でも。


でも・・・


彼女は思いとは裏腹にアプリをタップする。
それは当たり前のように、機能した。
受信ボックスには、見慣れた友達の名前。
ふざけたタイトル。送信したままタイトルを変えずに返信されたテキスト。
挨拶がタイトルのものも。
思い出してフォルダー管理から、シークレットに振り分けたメールを呼び出してみる。
ロック解除画面があって、ナンバーを打ち込むように指示される。
ちゃんと覚えている、四桁のナンバー。
入力すると、いくつかに振り分けられた受信ボックスが表示された。

原因について、彼女は考えた。
解約後、突然機能が失われたのは、例えばセキュリティソフトを始めとするいくつかのソフトをアンインストールしたのが原因だったかも知れない。
システムの復元を試みたけれど、無駄だった。
リカバリは論外だった。その時は。
そして、その後は?
新しいスマートフォンを手にして、新しい生活を受け入れて、日々の忙しさに紛れて今に至った。
彼女は戸惑いなくタップする。
懐かしい文面が、二年と言う時を越えて甦った。


“悠理、おはよう!今からそちらに向かう準備。
用意ができたらまたメールします”

“宿題したんだろうね?
今回はノートを写させないから、自分で解くように!!”

“おそようって、ホントに起きてるの?
午後から僕と約束なの、覚えてる?”

・・・・・


覚えている、と彼女は思う。
どのメールも、すぐに何を意味するのか、覚えている。


清四郎、笑っちゃうほど、覚えているよ!
こんなおしゃべりみたいなメール、あたしったら大切に振り分けてたよ。
仲間にバレないように、シークレットにしてさ。


彼女は声に出して笑った。ちょっぴり恥ずかしさも交ざって。
メールを半分以上読む。
会話文だから、簡単に読める。
まるで、さっき受信したようにさえ感じる。
だから勘違いしてしまいそうになる。
このメールにこのまま返信したら、届くのではないかと・・・

結局はただの障害だったのだろうか。
セキュリティソフトをアンインストールしたのが障害を起こし、ネットサーフィンのために別のセキュリティソフトをインストールしたのが復旧できた原因なのか、分からない。
分からないまま、彼女は彼からの受信メールを全て読み尽くした。


今なら、何事もなかったかのように話せるかも知れない。
すれ違いから起きた喧嘩も、その後の別れに至るまで。
“清四郎、あん時はひどかったなぁ!”なんて笑いながら、肩叩いて向き合えるような気がするよ。


そう、彼はメールアドレスも電話番号も、多分変えていないだろうから。
この白ロムからは何も発しないけれど、今持ってる携帯電話なら。
一瞬迷って、考え直す。


清四郎はどう思ってるの?
あれから、どうしてるの?
大学が別だから忙しいんだろうけどさ。
どうせ、変わってないだろ。
あたしからメールしちゃったら、負けちゃう気がしてきたから、やっぱヤメタ。
でもきっとお前のことだから、メールしても普通に返信してくれるんだろね。
その後は?その後は・・・友達の関係に戻るんだろうか?
分かんないね。ちっとも。
あたしは電話番号もメールアドレスも変えたんだ。
そうすることで、吹っ切れるような気がしたから。
もちろんその通り、いい手段だったさ。疲れちゃってたしね。
お互い、そうだろ?


そろそろ引き出しに戻そうとして、けれど悪戯と懐かしさの入り交じった気持ちが、フリーメールのアプリもタップする。
解約してからずっと触っていなかった。
IDとパスワードを入力するとすぐにメール受信が始まった。


彼女は今、涙で画面が見れなくなった。
携帯電話を解約してから今日まで、数えきれないほどのメールが届いている。
普段通りの、当たり前の、会話文みたいに。


“悠理、おはよう。
いい加減、気づいてくれないか。いつになったら気づくんだ??
パソコンからフリーメールくらいアクセスできるの知ってるだろ。
相変わらず、バカなんだから!”


受信時間は数分前。
彼女は震える指先でフリックしてタップする。
このメールに、返信するために。
返信する内容は・・・そう考えると、また涙が溢れ出た。



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