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恋心の忘れ方 1

夕焼け空の帰り道、さっきから悠理は僕の2メートル先を歩いている。
足早で、何だか僕から逃げているみたいだ。
けれどそうじゃない。だって僕がそっと速度を緩めると、彼女は背中で察してその速度も緩まる。


「ねぇ、もうちょっとゆっくり歩きません?スピードだけは悠理に敵わないの、知ってるでしょ」


彼女は振り向かないで答える。


「るっせーなー!足の速さはお前だろ?」
「そうでしたっけ?忘れちゃいましたね。走ってみます?」
「やだよ。疲れっちゃってるもん」
「ですよね。僕もです。だったらどこかでお茶でも?」


今度は答えない。
そんな時は大抵OKの意味で、僕たちは最初に見えたファーストフード店に入った。
窓辺のカウンター席で隣り合い、それぞれのトレーにはコーヒーカップしか置かれていない。
違うのは、悠理のトレーにシュガーとミルクが添えてある程度。


「元気もない。食欲もないと来たか」
「ふん!女の子の日だもん」
「あ、そう・・・ふうん。でも、他にも理由があるんじゃないの?なんてね」
「知ってるなら訊かないで。ウザいから」
「ごめん、ごめん」


先月末、悠理の大親友である魅録が僕の幼馴染みの野梨子と付き合い始めた。
始めると言うより、もう少し前から二人の気持ちは通じ合っていて、それがメンバーに明らかになったのが先月末。
皆は喜んで受け入れたが、そうじゃないのがひとり・・・


「まぁ、いい加減諦めたら?魅録だって、悠理が嫌いになって離れた訳じゃないでしょうに。今まで通りの友達であり、仲間だって言ってましたよ。
何も変わらない、今まで通り。ね?」
「・・・・・」
「そりゃあね、二人でコンサート行ったりツーリングしたりってのはできないでしょうけど」
「それができないってのは、今まで通りではないワケよ」
「うん。でもね、魅録たちの気持ちもくんであげてね」
「ふん」
「全部受け入れて」
「ちぇっ」
「分かってあげなさい」
「なんだよっ!その平和的解決。あたしはどうなるのさ?」


僕は温くなったコーヒーに口をつける。
美味しいとも言えないけれど、他にすることが見つからなかった。


「あたしだけ、我慢するの?」
「いや」
「あたしだけ、じっとしているの?」
「そうじゃないけど。ちょっとは大人になったら」


毎日繰り返される会話に、お互い嫌気がさしている。
けれど、分かってあげなきゃ。魅録たちの新たな関係について。
進歩のない僕たちの会話は迷宮入りするかのように閉ざされかける。
悠理が、口を開く。


「あたしの気持ちは、どうなるんだろう?」


僕は、知りたくなかった領域に足を踏み入れなくてはいけなくなった。
視線をあげると窓の向こうはすっかり日が暮れていて、鏡のように僕たちの姿が写し出されている。
悠理は・・・悲しそうな視線で僕を見つめていた。
“魅録たちの気持ちを分かってあげなよ”は、今の彼女にはキツ過ぎる、か。
確かに一方的過ぎるし、彼女の気持ちの行き場はない。
僕は窓ガラスの向こうの彼女に向かって話しかける。


「悠理は、どうしたいの?」


会話に進歩が見られる。こんな形で?


「魅録を、取り戻したい」
「うん」
「野梨子との関係も、壊したくない」
「悠理は、魅録が、その、好きなの?」


女は窓から視線を横の僕に移す。


「好き。野梨子から奪い取りたいくらい」
「へぇ・・・」


僕は窓ガラスから目を逸らせない。
悠理の言葉に、体はがうまいこと動けなかった。
しばらくして、悠理がへへっと笑う。

「冗談だよ、清四郎ちゃん。そこまで本気出してない」
「ふうん」


彼女はすっかり冷めたコーヒーを一息に飲み干すと、帰ろと言って席を立った。





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