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misunderstanding

“明日の勉強会で使う参考書、悠理が理解しやすいと思うのを買って持って来て”


そう清四郎に言われて、学校帰りに書店に寄ってテキトウなのを買って出た。
狭い階段を下りて通りに出ると、目の前のバス停横に野梨子が背中を向けて立っていた。
春らしいピンクのワンピースを着て、白の女の子らしいショルダーバッグを肩から下げている。
そう言えば今日、放課後の部室に野梨子はいなかったっけ。
誰かと待ち合わせだろうか?
部室には他に・・・可憐はデートだって言ってたし。他のメンバーはいたよな。
声をかけようかどうしようかと悩んでいたら、いきなり魅録が現れた。
あたしはびっくりして思わず書店の下の児童書専門店に入ってしまった。
二人にはバレていない。
絵本を眺めるようにしてショーウィンドウから様子を窺う。
偶然会った感じじゃない。
でもさっきまで魅録、あたしと部室にいたんだぜ?家に着替えに戻ったにしちゃあ早過ぎない?
は~ん、駅前かどっかのコインロッカーに、私服を入れてたんだな、アイツ。
いつもあたし達が学校帰りに遊ぶ時のように。
そう分かった途端、胸がきゅんって痛くなった。


野梨子と会うためにそうしたの?


二人は立ち話をした後、当たり前のように並んで歩き始めた。
あたしは慌てて店を出て、二人に気付かれないよう後を追った。
普段通りの友達の距離で、楽しそうに話ながら歩いてる。
おかしいって言えば、魅録のジーンズにパーカーってスタイルと野梨子のとが合わないくらい?気にならないって言えばそうだけどさ。
どこまで行くんだろう?
目的地は決まってるみたいに、迷う事なく進んでる。
でもこの先、通りの向こうは繁華街しかないよ。
ちょっと早い夕飯ってとこなのか?
思った通り、二人はレストランに入った。
小さな洋食屋さんって言った佇まいで、店舗の前にはこじんまりとした庭がある。
丸太小屋をイメージしたような、そんな店。
ああそう言えば、前に来たかも、あたし。
あん時は、ええっと、清四郎と美童とで来たんだっけ。
美童が割引券持ってて、一枚で二人までで、ジャンケンで清四郎とゲットしたんだよ。美童は会員価格でさ。
けっこう旨かった。家庭的な味のステーキだった。
二人が席に着いたであろうと見計らって店に入る。
まだ早い時間だったから、奥のテーブル席に案内されたみたいだ。
ちょうど良い感じにこっちに斜め背中を向けて、二人庭を眺められるように座っている。
あたしは一人だったから、間仕切りを挟んだカウンター席に案内された。二人に背中合わせするみたいに。
メニューを一緒に覗き込んでる姿はまるで恋人のよう。
カウンター越しの棚のガラス戸にはっきり映っている。
声は、後ろからはっきり聞こえてくる。そう、キコエテクル。


「野梨子は肉?それとも魚?」
「そうですわねぇ、お肉にしますわ。悠理がお肉が美味しいって言ってましたもの。魅録はどちらにしますの?」
「俺も同じのにする」


ウェイターがタイミング良くオーダーを聞きに来る。
魅録はスマートに二人分の焼き方やソースを伝える。
あたしとの外食の時は、こんな感じじゃないよ。もっとこう、テキトーな感じ・・・
ついでみたいにあたしのオーダーも聞きに寄る。
あたしは簡単に、スープパスタにパンとサラダをつける。
ご飯おかずにご飯食う、そんなさ。
ヤツラはシンプルなディナーコース。
前菜が運ばれて、会話が途切れる。
ナイフとフォークが皿に触れる心地良い音が響く。
その音に邪魔にならないように、魅録は料理の感想を言ってるみたい。
声が低過ぎて聴こえて来なかった。
カウンターのガラス戸には穏やかな二人の姿が見える。
楽しそうに食べてる。
あたしの目の前にも料理が並ぶ。
スープパスタ、ロールパン、サラダ。
大きなグラスの水を飲んでからフォークとスプーンを手にした。
時々ガラス戸に映る二人と後ろから聴こえて来る会話を気にしながら、あたしはパスタをフォークに丸めて口に入れる。


「そうですわ、魅録。ほら、あれ、先日も言いましたでしょ?あれをくださいな」
「あれ?あれってなんだっけ」
「あら、もう忘れたなんて言わせませんわよ」
「だって、なんの事だか分からないよ」


野梨子が食事途中で思い出したように口を開く。
はっきりとした声が店内に響いて、あたしはちょっとびっくりした。
思わず振り向きそうになるくらい。
あたしがそんな声出したら“はしたないですわ”なんて怒られるのが常なのにな・・・


「あれですわ。魅録のお部屋の本棚に飾ってある、あれ」
「ああ、あれか。思い出した。なんであんなの欲しいの?」
「魅録こそ、あれを持っていても仕方なくってよ」
「まあ、あげてもいいけど」


魅録の部屋の本棚に、野梨子が欲しがるものなんてあったかな?


「じゃあ、決まりですわ!今日、これから、一緒に行っていただいても良いでしょう?」
「今日はダメだよ。遅くなるから」
「まだ明るくってよ」
「ダメだ。食い終われば暗くなるから」


そう、ガラス戸の向こう側の窓の外は夕方の陽射し。
ちょっと淋しげな、陽射し。
その声に気付いたように店内の照明がライトアップされた。


「野梨子、デザートは何にする?」


ボンヤリしていると、二人のテーブル脇ににデザートワゴンが置かれていた。


「そうですわね、この木苺のシャーベットとシフォンケーキにしますわ。魅録は?」
「俺はコーヒーだけで」


そう言ってウェイターにデザートを断る。
じゃあ魅録の分あたしにくれよな、なんて思っちゃう。


「見て、魅録。中庭がライトアップされましたわ」


その言葉に今度は振り向いてしまい、中庭を見る。
けれどすぐに慌てて前を向き、ガラス戸を凝らす、けど。
店内の照明がキツすぎて、もう外は見れなかった。
あたしはデザートもコーヒーもオーダーしていなかったから、ちょっと迷って会計に向かった。
表に出ると外はずっと暗くなっていた。
中庭のライトは本当に綺麗で、入り口から離れた所で少しの間見ていた。
これからどうしようって思ったけど、二人を更に追ってもどうだろうと思う。
そうこうしている内に魅録達がレストランから出て来た。
慌てて木陰に隠れたけど、タイミング良く来たタクシーに二人は乗っていなくなってしまった。
あたしはブラブラとさっき来た道を戻る。
戻って、それからどうしようと考えていると、目の前に清四郎の家が見えた。
またなんで?なんで清四郎の家なんだ?
隣に野梨子んちがあるって言うのに、バカだなあたしって。
野梨子は、帰っているのかな・・・偶然を装うように訪ねてもいいけど、魅録がいたらヤダしな。
清四郎の家のインターフォンを鳴らしてみると本人がちょうど出た。


「悠理?あれ、勉強会は明日でしょ」
「そうだけど、参考書を買ったから見てくんない?」


いいよって、本人が門まで迎えに来てくれた。


「せっかくだから夕飯も食べていけば?」
「ううん、いらない。もう食べたから」
「もう食べた?それっておやつでしょ」
「ううん、もうたくさん」
「ふうん」


清四郎は部屋にあたしを入れてベッドに座るように言い、自分は机の椅子に座った。


「どれ、参考書を見せて」


片手を伸ばす。
あたしはバッグから参考書を取り出して見せた。


「ふむ。ま、良いでしょ」


パラパラとページをめくっただけで分かるの?


「で?夕御飯はどうして食べられないの?下痢?」
「アホ!だから、もう食べたんだって。ほら、美童が会員のレストラン。前に三人で食べに行ったじゃん」
「ああ、そんな事もあったかも」
「忘れちゃったの?」
「独りで行ったの?」


逆に訊かれて、でも言葉が出てこなかった。


「珍しいですね、独りでなんて。魅録は?」


応えに迷っているとタイミング良くドアがノックされた。


「はい、どうぞ」


ドアが開くと野梨子が現れる。
さっきまで魅録といた、野梨子が。


「今、回覧を届けに来ましたらおば様から悠理がいるって聞きましたのよ」


悠理、って野梨子に言われてじっと見つめられると、さっきの事で罪悪感を覚えてくる。
特別悪い事した訳ではないんだけどな。


「さっきレストランにいましたでしょ?魅録も気付いてましたのよ。実はバス停あたりから」


ドキッと心臓が、口から出そう・・・つけてたって、分かってたんだ・・・
でも野梨子はコロコロと鈴を鳴らすように笑った。


「俺達を勘ぐってるんだって笑ってましたわ。気付かない振りしておけって」
「でも、どうして二人で?」


清四郎が訊き難い事を平気で訊いてくれる。


「あら、だって私と魅録だけが行った事がなかったから、美童に割引券を譲って頂きましたの。
可憐も誘ったんですけど、前の彼氏と行った事があって、思い出すからもう行かないと言ってましたわ。
ホホ、今の彼氏に誘われたら、初めてと言って行きますわね、きっと。
あの後、本当は悠理を驚かせてから一緒に帰ろうと思ったんですけど、お会計の時にはもういないんですもの。
ねぇ悠理、明日清四郎との勉強会が終わったら魅録の所に行きませんこと?
魅録の部屋の本棚にクリスタルの綺麗な置物が三つありますの。
可憐の分と悠理、私で頂く事にしましたの。
千秋さんの旅行のお土産で、もう随分前の私達宛だったそうですけど、ずっと忘れていたんですって。
棚に馴染んだから嫌がられたんですけど、魅録に。せっかくですから強制的に頂きますのよ。
だから、ね、明日」


それから野梨子は“ごきげんよう”と言って部屋を出て行った。
ホッとしたような、そんな感じが胸に広がる。


「良かったですね、悠理。魅録と野梨子はたまたま食事に行っただけで」
「へ?え?ふ、ふんっ!別に関係ないもん」
「ふうん、そう?二人がもし交際していたとしてお前が傷付いたんなら、慰めてあげても良かったのに」
「ば、ばかやろ。そんなんで傷付くか!」
「ま、ひと安心したところで、お腹が空きましたね。今から僕と二人で食事に行きましょうか。さ、ほら」


清四郎は突然あたしの腕を取る。


「え?え?」
「下のダイニングまで、どうぞお嬢さん」
「ふぇ?」
「もう姉貴達は食べ終わった頃だから、僕と二人っきりで夕御飯、ね?」
「あ、なんだ」
「魅録が見たら嫉妬するでしょうか?」
「ば、ばか」


嫉妬と言われて、フクザツな気持ちになる。
清四郎は、どうよ?
あたしは、あたしは・・・今のまんまがいい。
メンバーの誰と誰が付き合って、なんてそんなのイヤ。
今の、この六人のスタイルが一番いい・・・いいんだ。





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