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No Way, No

あたしは今、人生最大の危機に直面している・・・なんて言うのは冗談だけど、ちょっとヤバイ状態ではある。
さて、どうしようかな。い、いや、悩んでいる場合じゃないよな。
ここは自分の気持ちに正直にならないと、相手だって傷付いちゃうかも知れないワケで・・・うん。
そうだ!ここでキッと振り向かなくっちゃ!
これ以上その気を高めちゃったら取り返しがつかないかも。
そうだよね、そうじゃないと・・・あたしのパンチが全てをだいなしにする・・・

あたしは思いきって振り返った。


可憐の付き合いで、とあるパーティに参加させられる事になった。
あたしだけじゃない。美童はもちろん、清四郎も。
魅録と野梨子はもうできちゃってるから参加はしなかった。
つまり、彼氏彼女がいない人限定の、出会い系パーティってとこかな。
で、当日、清四郎以外は全員時間に遅れずに出席したんだけれど、気が進まなかった清四郎は適当な理由を付けて途中から参加する事になった。
可憐と美童はすぐに好みの相手を見つけて、あたしはと言えば、ちょっと浮いちゃってる。
この中に好みのタイプはいないし、彼氏なんて必要ないし。
だから早く清四郎が来てくれれば助かるって思った。
お互いそう思ってなくってもこの場に二人でいれば、回りから見てカップル誕生だと思われるかも。
清四郎だって、知らない女に気を使っているより、気心知れたあたしといた方が楽だと思うさ。
でも、清四郎は一向に来ない。
可憐と美童はそれぞれに楽しそうだし、他にも気の合う相手を見つけてる。
あたしはすっかり一人ぼっちで、デザートのケーキをつついていた。

「厭きちゃいますよね、このパーティ」

突然声をかけられて振り向けば、さっきまで別の女の子といた奴がいた。
特別印象的な感じの男じゃないけれど、見かけはいいのかもね。

「適当に相手を見つけて話してたけど、自分が乗り気じゃないから、相手に分かっていなくなってしまう」

そいつはアイスティのグラスを二人分置いた。

「大学生?ワインか何か飲んだらいい」
「車だから。それに、高校生も中にはいるでしょ?アルコールはいけないよ」
「ふうん。ご自由に」
「君も、本当は乗り気じゃないんでしょ?さっきから見ててそう思った。
人数合わせに付き合わされた」
「まあね。だから早く終わればいいなって」

それから、たわいない会話が始まった。
二人でテーブル席に座り込んでだらだらと。けれどちっとも厭きない。
あたしに話を合わせてくれてるから。
話上手な人なんだなって感じた。

「ねぇ、控え室に行かない?ここ空気が悪い」
「いいよ」

あたし達は会場に隣接する控え室に入る。
誰もいなくて、エアコンがガンガン効いていてスゴく寒い。
可憐に見立ててもらったハイネックノースリーブのフレアスカートじゃあ露出し過ぎて寒かった。
ソファに投げ出していたカーディガンを着ようとしたけど見当たらない。

「寒いの?大丈夫?」
「ソファにカーディガンを置いてたんだけど、ないんだ」

さりげなく、奴はあたしの腕に触れる・・・

「ホントだ。冷たいよ。僕のジャケットを羽織ってて」

上品な香水の香りがする。
男性用で、何て言う香水なんだろう。美童のとも違う。魅録は使わない香り。
清四郎は・・・あいつ、どんなの使ってたっけ?

「温かいコーヒーか何か、持って来ようか?」

考え込んでいたら、顔を覗き込んでそう訊いた。

「ううん。ありがと。大丈夫」

あたしは奴から一歩離れる。
けれどまたすぐ距離が縮まる。嫌みな感じがないけれど、緊張しちゃうよ。
近付かないでくれ。ジャケットだって返したいよ。

「ねぇ、あっちの椅子の背もたれに掛かってるカーディガン、あれキミのじゃない?」
「あ、ホントだ。あっちに行っちゃってたんだ」

あたしは壁際の椅子に近付いて手を伸ばそうと、でも後ろから重なるように奴の腕が伸びて来た。

「・・・・・」

どうしよって思う。どうしたらいいのって、自己防衛的な思いがチラチラ過る。
あたしは背を向けたまま借りたジャケットを脱いでいると、後ろからそれをするりと抜かれ、代わりにカーディガンが肩に掛かった。
ずっと背中に視線を感じる。
あたしってとことんバカだなって思う。
別に誘惑してるワケじゃないし、色気なんてドコにもないけど、この状況で普段通りの振る舞いは良くなかった。
突然部屋のライトが消える。
びっくりしてオロオロしていると、奴の声が近くに聞こえた。

「窓から中庭を見てごらん。ライトアップされていてとても綺麗だ」

なるほど窓の外は明るい。
ホッとして窓辺に近付くと、ブルーのライトで中庭がライトアップされていた。

「うん。綺麗だ。みんなも知ってるのかな?」
「さあ。カップル誕生目指して、それどころではないんじゃない」
「そうだね」
「大切な人に見せたくなるよね。特別なものではないけれど、小さな幸せは分かち合いたい」
「ガールフレンド?」
「付き合ってる訳じゃないけどね。好きな人がいるんだ。だから今夜は来たくなかった」
「ふうん」

それからしばらく、二人でライトアップされている中庭を見ていた。
油断していたんだと思う。後頭部にわずかに熱い吐息を感じる。
全身に緊張が走り、体が動かなくなる。
どうしよ、どうしよ、って頭を巡らしていると、今度は腰の辺りに何かを感じた。
触られているの?それとも、これ・・・
あたしは初めて女としての危機を感じ、意を決して振り返った。


次の瞬間、部屋のライトがパッと点く。
悠理って呼ばれて、その声の方を見ると見慣れた顔があった。
ホッとして近くのソファに座り込んだ。

「お友達が来て良かったね。僕は会場に戻るよ。またね」

あたしの肩に手を触れ、小さくウィンクして奴は部屋を出て行った。
名前も訊かない内に。
相変わらず地味なスーツの清四郎は、あたしの隣に座り込んで顔を覗き込む。

「・・・・・」
「部屋を暗くして二人で何をしていたんです?」
「ん・・・ライトアップしてある中庭をね、見てたの」
「様子がおかしいですね。暗闇で何かされていたんじゃないんですか?」

混乱してる頭の中を整理する。
何か、されていたって。そうなのかな?あたしのカンチガイかもよ。
でも・・・
あたしは今あった出来事を清四郎に説明する。
短いにも関わらず、多少の順番が前後して途中叱られながら。

「それは、悠理が欲望の対象になったんでしょうね」
「男って、怖いんだ・・・他に好きな女がいるって言ってたのに」
「いくら好きな女性、あるいは付き合っている女性がいると言っても、隙があるなら別の女性にも手を出す男なんてたくさんいますよ。
でも、女性に見られて良かったじゃないですか」
「ぐっ!ずっと女だよ、あたし」
「だから、隙だらけなんですよ、悠理は。フラフラそんな男に付いて来て、こんな部屋で二人っきりになって。
それに誰もお前を男として見てませんよ。女性らしくないだけの、女です。
お前の行動は、遊んで下さいって言ってるようなもんですよ。
そんなつもりじゃなくても」
「じゃあ、清四郎は?あたしを女だって思ってた?」
「異性を意識した事はないですね、悪いけど。
でも、男だと思って今まで見た覚えはありません」
「もし、あたしの隙を見つけたら、清四郎はどうする?」
「どう?悠理を?別に、隙があっても何もしませんよ」
「ほら、女だって思ってないじゃん」
「僕はね、こう見えてもわりと律儀なんです、女性に対しては。
どんなに隙があっても、付き合っていない相手には欲望を抑えますし、
大切な相手に対しても、自分の思いだけを押し付けやしません」
「ふうん・・・好きな人だけを大切にするってコトだね」
「ま、そんなところです」
「ある意味、臆病とも言う~」
「馬鹿らしい。品行方正な男なんです、僕は。
ところで悠理は、さっきみたいな男がタイプなんですか?
いつもならパンチの一つや二つはすぐでしょ。よく黙ってましたね」

清四郎にそう言われて、ちょっと考え込む。
確かに、どうしたんだろう、あたし。よく我慢してたよな。

「可憐の知り合いだし、パーティをだいなしにすると思って。
それに危険は感じたけど、悪い奴じゃないとも思えて・・・
もちろんあれ以上進んだら、やっぱりパンチが飛んだよ、きっと」
「ま、今はそう思っているんでしょうけれど、その内、あの男に惚れ込まないようにね」
「な、まさか、そんなコト、あるもんか!」
「そうだといいですけど。多くの女性は、非日常的な経験をすると、普段とは違う感情の変化があるようですよ。
悠理が“女”なら、の話ですけどね」
「ば、ばかやろう!!!」
「悠理。あんな軽薄男に惚れ込んじゃダメですよ。自分をもっと大切にしないと。
本当にこの人ならって思える人とじゃないと、傷付くのは自分なんだから」

いつになく、清四郎が真面目な顔であたしの目を見つめながらそう言う。
だからあたしも、珍しく素直な気持ちになれた。

「うん、分かった。野性の勘がガツンと働く男と付き合うよ!」
「そうそう。もうずーっと前にガツンと来ていた可能性もありますよ」

ん?っと思って見つめ返すと、清四郎はチャーミングに笑って見せる。

“それにね、悠理。灯台の下は意外と暗いんですよ”





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