FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

push me away side:s

野梨子に頼まれて、さっき悠理が彼女の部屋に忘れていったと言うスマートフォンを届けに剣菱家へ向かう。
ちょうど僕は悠理の兄である豊作さんに用事があったので、ついでに・・・と言う形で預かった。
本当は、悠理に話があった。
と言うのも、もう数週間前、そう確かあれは夏の終わりだ。
僕と悠理の間に、ちょっとした出来事があった。
いや、原因は、僕にある。
彼女の後ろ姿に、今まで経験したことがない感情が生まれてしまった。
シャワールームという狭い空間、または二人っきりというシチュエーション。
普段とは違う異空間が、僕をそのようにさせたのかも知れない。
僕だって十代の健全な男だ。あのような感情が出ても仕方がない。
けれど選りに選って?
選りに選って悠理に対してそんな感情が芽生えるなんてね。
因みに僕は、別の女の子でもそのような感情になるのか試してみた。
悠理だけじゃない、十代特有の自然現象なら、女の子に対してそうなっても致し方ないのだから。

まずはメンバーとは言え、男性陣の目を引く可憐。
客観的に誰が見ても綺麗である。
好みもあるかも知れないが、一般的な美人である。
そんな彼女が、季節の変わり目だから風邪をひいたと言って学校を休んだ。
でも多分、本当の理由は、朝に降った小雨のせいであろう。
きっと、クリーニングから戻ったばかりの制服が汚れるのが嫌だとか、新しいコートが濡れるのが嫌だとか、そんなところだろう。
年上の彼女とデートの約束だと言う美童の代わりに、宿題プリントを、クラスこそ違うが可憐に届けることにした。
彼女の母親が、部屋の前まで案内してくれた。

「可憐ちゃん、清四郎君よ」

後で可憐にお茶を淹れてもらってね、と階下のジュエリーショップに戻っていった。

「清四郎?珍しいわね、野梨子は?」

部屋に入ると案の定、可憐は部屋着でベッドに寝そべっていた。
女の子らしく、ほのかに良い香りが部屋中に広がっている。

「野梨子は特別出演で、演劇の練習だそうです」

ふうん、と言って立ち上がると、コーヒーを持ってくると部屋を出た。
僕は一人がけのソファに座り、部屋中を見渡した。
綺麗ではあるが、あちらこちらに脱ぎ捨てたような服がかかっている。
それに・・・ベッドの上には下着らしい感じのものが見える。
けれど僕は、気づかない振りで行こうと思った。

「今日は何の用事?」

コーヒーをトレーに載せて戻ってくると、ばつが悪そうにベッドに座る。

「風邪は良くなりましたか?宿題プリントを届けに来ました」
「う、うん。大丈夫よ。宿題プリントね。後でやるわ」
「明日までにできますかね?」
「多分ね」
「あ、でも。今はお天気曇り空ですが、今日夜半過ぎからまた雨のようですよ」
「ああ、そう。あ、わたし、またちょっと寒気がしてきた。清四郎、コーヒー飲んだら帰った方がいいわ。うつると大変だから」

可憐は部屋着で着ていた厚手のトレーナーを脱ぐと、近くにあったパジャマを羽織るようにしてさっとベッドに入った。
一瞬、大胆に胸元が見えたような気がしたが・・・
意識し過ぎているからなのか、何のトキメキも起こらなかった。

外に出るとすでに小雨が降っていた。
秋の雨は底冷えするように冷たく、どこか砂の臭いが雑ざっている。
僕は朝から持ち歩いていた傘を広げ、深いため息をひとつ吐いてから歩き始めた。
多分可憐は、明日も休むのだろう。
本当に風邪なら心配だが、でもそれは大切な仲間として、友達としてであって、それ以上ではないのだと確信した。


次は、幼馴染みの野梨子。
兄妹のように赤ん坊の頃から育てられ、互いの弱点すら知り尽くしている相手に・・・果たしてそのような感情が芽生えるのだろうか?
同好会の帰り、タイミングよく彼女に家の門の辺りで呼び止められた。

「清四郎、今帰りですの?ちょっと手を貸していただいてよろしいかしら?」
「何です?面倒なのは嫌ですよ」
「面倒なんてありませんわ。裏庭の物置小屋ですの」
「はいはい」
「“はい”は一回でよろしくってよ」
「はいはい・・・」

正面から裏庭に抜け、以前は弟子達が暮らしていたと言う小屋に入る。
けれど手入れがしっかりと行き届いており、まだ誰かが借りて住んでもおかしくないほど綺麗だった。

「物置小屋にしておくには勿体ないですね。魅録みたいにこちらを野梨子の部屋にすればいい」
「あら、嫌ですわ。夜なんて気持ち悪くてよ。でもさっき、悠理も同じように言いますので、“悠理の勉強部屋にしてさしあげます”と言いましたらかなり怖がってましたわ。霊的なものもおありでしょうけれど、近くに清四郎がいるのが、何よりも怖そうでしたわ」
「僕ですか?」
「ほら、この家の上に、清四郎の部屋の窓が見えますでしょ」

二人で見上げれば、なるほど僕の部屋の普段はほとんど覗かない小窓が見える。

「あそこから勉強しているか監視されたら、とても怖くていられない、と」
「見ますかね~、僕が」

ほほほ、と野梨子が笑う。

「覗くことがないように、清四郎の部屋もこの小屋に用意しておくと伝えましたわ」
「はぁ?」
「本当は清四郎に優しくして貰いたいんですのよ。可愛らしいじゃありませんか」
「僕はいつでも悠理に優しいですよ」
「あら、でも・・・最近の清四郎はとても冷たいってぼやいてましたわ。避けられてるみたいって」
「そんなこと、ないですよ!」
「でも、悠理がそう感じるのなら、そうなんですのよ」
「・・・分かりました。気を付けます」

冷たいって・・・僕が?悠理じゃないですか!
あの時から、僕を避けてるのは、悠理でしょう。

心の中で僕もぼやきながら、悠理とのすれ違いをちょっと悔やむ。

「で、悠理がさっきまでいたんですね?」
「そうですの。それで悠理にも物置の件を頼んだのですけどね、嫌だって言われましたわ。だって、悠理ですのものね。
でも今日はお弟子さんも父様も留守で困ってますの。奥の部屋の天井裏に、普段余り使用しない花器が収納してあると母様が。私では取れませんでしょ。だから取って欲しくって」

奥の部屋は広い和室で、多分、以前は住んでいた弟子達が稽古をしていたのであろう。
床の間には鑑賞用の軸がかけてあった。

「今でも毎日風を通しますのよ。物置とは言え、やはり思い出深いですわ」

掃除用具室から脚立を出してくる。
低めとは言え、小さな野梨子には大変重たそうだった。
僕は彼女からそれを受け取る時、その小さな体や腕に触れた。
小さな顔にも近付いた。
けれど・・・あの日、悠理と共用した時の感情は覚えなかった。

「ああ、それと。悠理ったらスマートフォンを忘れて行きましたのよ。悠理の所へ行く用事ありますかしら?」
「悠理の家ですか?」

けれど僕は頭を巡らす。
ちょうど良いチャンスだ。

「急ぎではありませんが、豊作さんから本を借りていたんです。ついでですから行ってみますか」

僕は自然を装うように悠理のスマートフォンを受け取った。
多分きっと、悠理は勘違いしているのだ。僕が冷たいだなんて。
僕は、悠理の方が僕を避けていると思っていた。
何故なら、突発的に、悠理に怖い思いをさせてしまったのだから。
距離を置きたがっているのなら、それに従うしかないと思っていた、けれど。
僕は部屋から豊作さんの本を取ると、急いで剣菱家に向かった。



もう一回くらい続きがあります~♪

拍手・ランキングへのクリックをありがとうございます!
ランキングへ参加しています。
にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村

スポンサーサイト
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。