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クリスマスの次の日

二学期の期末テスト、五教科赤点だった悠理の補習授業を逃れさせるために、僕は冬休み初日の土曜日に彼女を家に呼び出した。
来週から年末までの数日間、学校でびっしり補習を行うようにと担任に仰せ付けられたのだ。
けれど月曜日の追試で赤点がなければ、授業への参加は免除になるらしい。
ところが悠理ときたら、追試も補習も僕の厚意も勘弁してくれと言う。
だから僕は、自宅で家族とささやかに行われたクリスマスパーティの“余った”ケーキで釣ってみた。
案の定、彼女は簡単に釣られた。

「じゃ、まずケーキから」

教科書をトートバッグから出すこともしないで、僕の部屋に入るなり、ベッドにどかりと座って悠理はそう言った。

「だめだめ。まずは数学から。一時間集中して勉強できたら(余った)ケーキにします」
「え~っ!そのために来たんじゃん!」

何だかんだ言いながらも僕に捕らえられた彼女は、ぎっちり一時間数学の勉強をさせられた。
基本から応用まで、頭の中に入れるだけ入れる。

「ふぇ~。もうダメ。ケーキ以外、なんにも入んない。清四郎~」
「はいはい。分かった、分かった。ただ今お持ち致します」
「頼むよ~。約束~」

勉強を教えてやっているのに何だか偉そうだなぁと思いながらも、僕はキッチンに降りてコーヒーを作ってケーキを切る。
実は本当は、イヴとクリスマスを彼氏と過ごした姉貴の分のケーキ。
残してあるよ、と今朝伝えたのだが、

「いらない。二日間続けて鳥とケーキを食べちゃったから、もうたくさん」

と姉貴に言われたのだった。
トレーに二人分のコーヒーと、悠理のために切ったケーキを載せて部屋に戻る。
そうして“余った”ケーキの理由について彼女に述べた。

「へ?まじ?和子ねーちゃんの分か」
「でも食べないって。親父も僕も一回食べれば充分だし、おふくろはダイエット中だから」
「でも、いらない。あればきっと食べるかもよ」
「食べないから。悠理が食べて下さいよ。そのために呼んだようなもんです」
「悪いよ・・・」
「そんなこと。それにこんなこと、ですよ。ケーキくらい、でしょう?どうせ誰も食べないし、余って捨てちゃうくらいなら、悠理に食べて欲しいくらい・・・余り物で悪いけど」

そう、こんな“余った”ケーキごときで、なんだ、悠理。
普段の彼女はどこへやら、辛気くさい感じでケーキを食べている。
なんだ、“余った”ケーキに釣られ、喜んで食べてくれると思ったのに。
喜んだ、彼女の顔が見たかったのに。

「美味しくない?駅前の老舗の洋菓子店で、昔っから、家では何かの記念日にはここでケーキを作ってもらうんですよ」
「美味しいよ、とっても。でも、そんな家族のためのケーキを。ごめんね」
「え・・・そんな・・・」

なんだー、って思ってしまう。
どうした?悠理。お前らしくない。
「どこにも足りないよーっ!」って言われたら、それ用に買っておいたシュークリームもちゃんと用意してたのに。
彼女は「いらない」って言って、後の勉強もしんみりとしていた。
結局ケーキの後二時間勉強して、魅録がバイクで迎えに来た。

「今日は帰る。悪いな清四郎」
「いいえ。お土産にシュークリームを持っていかない?魅録と後で食べればいい」
「ううん、本当にいらない」

ふうん・・・女の子ってワカンナイ。
バイバイって二人に手を振って、そして颯爽と行ってしまった。

きっと誰かのための残り物じゃなくって、ただの残り物だったら喜んで食べたのかも知れないな、なんて思う。
でもそんな、変なところで気にする彼女が好きだって思えるから、いいや。

しばらくして悠理からメールが届く。

“ケーキと勉強をありがとね。
また、あした。今日と同じ時間に行くから。
ケーキ、とっても美味しかったよ”

何となくさっきから、悠理が遠くの手の届かないところに行ってしまったように思えて淋しかった。実のところ・・・
でもこのメールで、そんなことあるワケないって確信する。
今日の僕って、ちょっと変だ。

もしかしたら、“恋する男子”になってしまったのかも!
でもねぇ、彼女との恋は、すんなり行かなそう。
ま、そこが楽しいところでもあるんだけどね。

明日、また悠理の笑顔に会えるなら、まずはそれが小さな幸せってとこですか。

僕は携帯電話をそっとテーブルの上に置いた。





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