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恋の理由

最近の彼女はちょっと違う。
ちょっとって言うのは・・・普段と微妙に何かが違うと言う意味。
例えば、僕がからかったとして、いつもならそれにのって怒った振りをする。
冗談にはゲラゲラ笑い、皮肉には眉をひそめる。
つまり僕の言動にちゃんと反応してくれる。
けれど最近の彼女は、僕の言動をまともに、真正面に受け入れる。
例えば僕のからかいには、はにかむ。
冗談には微笑み、皮肉には肩を竦める・・・そんな感じ。

学期末の生徒会室の大掃除。
彼女はベランダでモップを抱えて遠くを見ている。
何かを熱心に見つめているのでなく、ぼんやり遠くを眺めている感じ。

「どうしたの?疲れたの?」

僕は訊ねる。

「ううん。遠くの空を眺めているだけ」
「遠くの空はどうなってるの?何か不思議なものでも飛んでるんですか?」
「あはは、まさかー。遠くの空、ちょっと向こうが赤くなってる感じ。だからもしかしたら雪でも降るのかなーって思ってたとこ」

彼女が望む視線は、ちょっとだけ希望を含んでいるように見える。
そしてその先には・・・

「どこ?」

僕はその先を探す。

「ほら、向こうの。ずっとあっちの方」

彼女は親切にも僕に顔を寄せるようにして空の向こうへ人差し指を掲げる。

「ああ、あそこ」
「ね、ちょっとだけ赤いでしょ?あっちの方で、雪が降るんだよ、きっと」
「雪が降る夜にはよく空が赤くなるって言うけれど、夕方から降るのかも知れませんね」
「どうして雪が降る夜は空が赤くなるの?」

僕達は姿勢を戻し、互いに向かい合う。

「実はロマンティックでも何でもないようですよ」
「うん?」
「雪雲は高度が低いので地上の光が反射されることと、降ってくる雪そのものも、地上の光を反射するんですよ。
だから大雪の夜に、外が明るいことって意外とあるようですよ」
「なーんだ」
「せっかくのところ、ごめんなさい」
「いいよ。だって清四郎だもん」
「あはは・・・」

調子狂うよね。そこで突っ込んでくれないと。

「ふ~ん」

僕は、ついため息を吐く。
彼女をこうしてしまったのは何なんだろう?

彼女はモップをベランダの壁に立て掛ける。
そして両手を手すりに置いて、はにかむようにして僕を振り返った。

「最近ね、こんな、ちょっとしたことが気になるんだ」
「どんな?」
「例えばさー、例えば、どうして空はどこまでも広くて、海は青いのかなぁとか」

僕がびっくりして見つめると、今度は照れくさそうにして目を逸らす。
ちょっとどころではなく、大分、彼女は変わってしまったのだ。

「証明するのが難しいことが気になる?」
「うん。そんな感じ」
「悠理はどうしていつもテストが赤点なのでしょう?」
「ばっ!それは、勉強しないから」
「遅刻するのは?」
「夜遊びするから寝坊するの!!そうじゃなくて~」
「じゃあ、どうして最近の悠理は素直なの?」
「・・・・・」

一瞬だけ目が合って、でもまたすぐに逸らされた。
そして顔から首まで真っ赤にしている。

「どうして僕のからかいや冗談を許すの?」

多分、原因は・・・

「綺麗なものを綺麗と素直に受け入れられる。悲しい時は共感し、一緒に涙を流す・・・
今の悠理ってそんな感じだよね、きっと」

それって、もしかしたら・・・不器用な僕だって推測できるぞ・・・

僕は悠理の肩に優しく触れ、両肩に自分の両手を置く。
そして真正面から彼女を見つめた。
彼女は目を泳がせるようにしながら僕を見ている。

「それって、悠理。もしかしたら、誰かに恋してるの?」

直で訊いたら、彼女はまた顔から首まで真っ赤にし、大きな目から涙をポロポロ流した。

「ば、ば、ばかぁ~っ!!」

僕の両手を払い、彼女は翻ってベランダから走り去る。
その衝撃で、さっき彼女が立て掛けたモップが倒れて僕の背中を直撃した。
去り際に、彼女は大声で“清四郎は何も分かっていない!”と叫んだのは、どういう意味だろう?

女の子って、ほんと、分からない。
これこそ証明できないことなんじゃないかな。

悠理が誰かに恋してる・・・

でもその事実が、僕の胸に鈍い痛みを与える。
これも証明できない痛み・・・?

今は、しょうがない。
冬休みの、二人の宿題にしましょうか。

さっそく明日から、悠理と取り組もうと決めた僕だった。





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