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after that

あれから何度か部員数の少ない体育部の今後について協議された。
まだ課題は保留ではあるが、今期は現状維持で通すことには決まっていた。
けれども放課後の活動内容に変更を求める部について、担当教師と生徒会長、体育部部長での書類のやり取りは続いていた。
時々、頼まれた書類を生徒会長宅へ届けることがあるのは、放課後の補習授業に出なければならない彼女の特権でもあろう。
そういう時、彼女・・・悠理は、名輪の運転する車では行かないようにしている。
理由の分からない胸の甘い痛みを覚えながら、清四郎のいる家に歩いて向かうことを選んでいる。
その理由ははっきりしていて、彼について考えることができるからだ。
例えば、この通りは彼の通学路だから、同じ光景を見て歩くのだろうと言う思い。
例えば、突然の訪問をどう思うのだろうとか、出掛けていれば何の気遣いもなく書類を置いてこれるだろうとか。
そしてその日も、放課後の補習授業後に頼まれた書類を持って清四郎の家へと向かっていた。
7月も終わろうとしているのに、その日は日中降り続いた雨が夕方になって上がり、黒く濡れたアスファルトはすっかり冷えきっていた。
肌寒さを覚えた時、何処かの茂みから一斉に蜩が鳴き始めた。
雨雲から射す夕方の陽が、ふと彼女の視線をある場所へと向かわせる。

あ・・・あれは、もしかして・・・

一軒の日本邸宅の広い庭先に見える縁側に、見覚えのある学生用のワイシャツ。清四郎の幼馴染みの少女には兄弟も姉妹もいないはずなのに。

冷めた肌を想像の内で温め、けれどその光景は、一瞬にして黒いアスファルトへとまた視線を動かせた。
心逸る気持ちは既に消え、悠理は全くの仕事として清四郎宅のインターフォンを押した。

「はい」

すぐに聞きなれた声。

「悠理だけど」
「ああ、ちょうど学校から連絡がありました。鍵を開けたところだったので、どうぞ」

ドアを開こうとしたが、次の瞬間にはその声の持ち主が彼女を見つめていた。

「これ、先生から」
「うん。入って、どうぞ」
「でも、これ渡すだけでいいって」
「いいから」

強引と言うわけではないが、多分彼女の正直な気持ちがスリッパを履かせたのだろう。
二階に上がり、彼の机の椅子を勧められる。
ちょっと緊張した感じに座ると、清四郎の笑顔が見える。
彼はベッドに座り込み、封筒に入っていた書類に目を通していた。

「はいはい。今期はこれで落ち着いた感じですね。そう簡単に部員を別の部には送れないでしょうしね。ね?」

書類から目を上げ、悠理を見つめている。
優しさと、どこか見せる悪戯な笑み。

「体育部部長。どうです?今後の動きについて」
「えっと・・・どうするのかな」
「うん。廃部はちょっとね。またやりたがる生徒が出たとしても、すぐには立ち上げられないでしょうし。まぁ、聖プレジデント学園は、体育部は盛んではないけれど、目的を持って入学する生徒もいるでしょうしね」
「う、うん・・・」
「僕と悠理とで今後も定期的に話し合いましょう。活動内容の変更の件もあるし、冬季前にはそこのところを決めちゃいましょう」
「うん」

ぎこちない返事と、居心地が悪そうな彼女に彼は問いかける。

「この部屋、初めてではないよね?」
「何回か来てるよ。メンバーも一緒」
「そう」
「うん」

数秒、沈黙が訪れる。

「頻繁に来てもいいんだよ。例えば、こんな書類なんてなくたって」
「・・・・・」
「隣には野梨子だっているんだし」
「あっ、そう言えば」

空気の流れが変わったのを察した彼女は、それに乗るように疑問を口にする。

「野梨子んちに、清四郎のワイシャツがぶら下がってた」
「え?・・・ああ、この間。おばさんのお茶会の時。ちょっと汚しちゃって、それで洗濯しますって。別にいいのにね」
「ふうん」
「気になった?どうして僕のが野梨子の家にって。怪しいとか、思った?」
「ばぁ~か」

清四郎が突然立ち上がり、悠理へと近づく。
びっくりして背筋を伸ばすと、彼の手が彼女の肩に置かれた。

「遅くしてしまった。送りましょう」

質問の返事と今の言葉に混乱していると、何だか悲しい気持ちになる。

「・・・大丈夫。独りで帰れる」
「危ないから」
「あっは!あたし、悠理様だぞ!」
「でもね、ね?」
「途中、迎えの車を呼ぶもん」
「じゃあ、今、ここで呼んで下さいよ」

結局彼女は、無事に名輪の車に乗るまで清四郎の傍を離れることを許されなかった。
外はすっかり陽が落ち、薄暗い外灯が、二人を照らした。

「じゃあ、明日。今度は遊びにおいで」

車の窓越しに、彼は言う。

「うん。じゃ、明日、学校で」

バイバイと悠理が手を振ると、車の窓が閉まる。
夜の空気が、車内に入り込む。

その後、発車して互いの姿が見えなくなるまで、二人は手を振っていた。




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