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later on

時々、でもそれは彼女のカウントによると月一回程度のペース。
それでも、今となっては放課後の貴重な時間。
その日も生徒会長との“今後の体育部の在り方”について話し合った。
けれども既に“在り方”は決まっていて、形だけの書類作りともっぱらの雑談。
日暮れ時間も早まり、午後の授業が終わる頃は夕方の気配すら感じられる。

「そろそろ確定書類を作成して提出しないとね」
「廃部は避けたいとみんな言ってる」
「結局人数が少ないとね、運営が難しいから。来年度の新入部員が見込まれるであろう部については、各部の部長と話し合った通り他校での練習で通してみます」
「後は同好会?」
「まぁ、書類が通ればね。ただ、部費がねぇ。他校の保護者よりは理解がありますけど、限界があるでしょうから」
「ふうん」
「理事長が納得しても、学園長が通らないからな、どうせ」

それから生徒会長は体育部部長と目を合わせて微笑む。
“任せて”という風に。
結局は、そう。
生徒会長・・・清四郎に任せてしまって間違いはない。
二人は確定書類をまとめてしまうと、馴れてきた会話と共通の友人達の話で弾んだ。
悠理はその事が最近嬉しいと感じた。
二人の間で起こる会話は、二人だけが知る記憶で、それは誰も入らない出来事だからだ。
それは素直に嬉しいと思った。

「じゃあ、そろそろ帰ろうか」

書類を明日、担当教師に渡せるように準備し、一緒に帰宅する事にする。
生徒会室の戸締まりを確認し、それぞれの鞄を手にした時だった。
突然の雨が強化ガラスを激しく叩き付ける。
悠理が驚いて窓辺に行くと黒い雨雲が空一面を覆っていて、大粒の雨が太い線を描くように落ちてくる。

「まじか・・・」
「このタイミング?」

迎えを呼んで清四郎を送って・・・彼女がそんな事を思っている時だった。
清四郎が鞄からスマートフォンを取り出す。
簡単な操作で耳にそれを押し当てると、ほんの少し彼女に背を向ける。

「ああ、野梨子?今、どこです?雨が降って来ましたが」

始めは意味が理解できなかったが、耳に勝手に入る会話は、やがてその意味を深めた。

“ふうん、そうか、やっぱりね。そうじゃないと、小さい頃からのつじつまが合わないよ。
ただの幼友達だって言うけど、こんくらいの雨で電話するか?ふつう・・・”

急に熱くなる体とは裏腹に、心が冷め切ってくるのが分かる。
悠理は彼に気づかれないようにそっと広い背中を見つめながら後ずさると、一息に生徒会室のドアを開けて駆け出した。
けれど既に気配に気づいていた清四郎はドア越しで彼女の腕をつかんでいた。

「悠理どこに行くの?」

スマートフォンをまだ耳にしている彼が彼女に話しかける。

「え?あ、急に用事を思い出して」
「ちょっと待って。今終わるから」

悠理の腕をつかんだまま、清四郎は電話を続ける。

「じゃあ姉貴に送ってもらうんですよ。はいはい、どうも」

電話を終え、スマートフォンを今度は制服の胸ポケットへしまい込む。

「失礼。姉貴がね、野梨子と可憐を連れて買い物。来月、同僚の結婚式に呼ばれたって。本当は“悠理ちゃんも”って言われたんだけど、放課後は僕との取り組みがあったから断っちゃいました」
「なんだ・・・そう?」
「土日も病院勤務だから、急遽、今日の放課後にね。まだ結婚祝いもフォーマルドレスも決まらないから、もう少し歩いて、ディナーしながら考えるって」
「えっ、いーなー」
「だって他人のプレゼント決めるって、悠理は得意じゃないでしょ?」
「まーねー」
「僕は姉貴が得意じゃないし」
「へ?関係ないじゃん」
「あはは」

二人は生徒会室のドアに鍵をかけ、昇降口へと向かう。

「悠理、傘は?」
「ないけど、大丈夫」
「折り畳み傘を持っているから送ってあげましょう」
「いいよ」
「いいから」
「雨に当たる前に走り抜くことができる」
「ははは・・・あ、そうだ!いいこと考えた!」
「なーに?」

胸ポケットに入れたスマートフォンをまた取り出す。

「どうも、清四郎です。今、暇?」

今度は誰に電話してるのだろうと悠理は清四郎を見上げる。
何かを察して彼は悠理の腕をつかみ、じっと彼女の顔を見ながら話を続ける。
放課後の昇降口は普段よりずっと静かで、声が響く。
薄暗く、雨の匂いがした。

「僕は悠理と部会の資料を作っていたんですけどね、野梨子と可憐が姉貴と買い物に出ていて、もう少ししたら夕食を取るって言ってるんで、せっかくだから僕達も一緒しようかなって。魅録はどうです?」

その会話に、悠理は思わずジャンプする。
慌てた清四郎が、つかんでいる腕に力を入れた。

「ええ、大丈夫?では悠理の家に集合と言うことで。美童にも声かけてみますから。雨降りですが気をつけて。後ほど」

ひどく喜ぶ悠理に、清四郎は言う。

「悪いけど名輪さんを呼べるかしら?急いで着替えて、悠理の家に行きたい」
「りょーかい!」
「そしたら僕は美童と野梨子に電話するから、頼む」

さっき、ちょっとだけ感じた痛みが嘘のよう。
悠理は心の中がすっかり晴れ上がり、温かなもので満たされたような気持ちがした。




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