silent day

“分からない問題があるならいつでも訊くように”

来週の期末テストに向けて目下?勉強中なあたしだけど、独りではちょっと集中力ない。
けれどメンバーそれぞれ、お楽しみの冬休みに向けて頑張って勉強していて相手にしてくれない。
そう、冬休みに入ってすぐに、あたし達は南の島へ遊びに行く予定。
追試や補習なんて受けてられないよね。
だからあたし、苦手な英文法にトライしているんだけど・・・やっぱり分からない。
“いつでも”って言ってくれている相手はあたしにとって一番苦手なやつだから、本当は電話したくないけれど。
でも、追試になったら、みんなが乗る飛行機に乗れなくなっちゃうよ。
きっと分からない理由を訊かれて、説教されて、“すぐに来なさい”って言われちゃうんだろうな、絶対。
正直つなげたくない番号へ、あたしはタップする。
まずは、固定電話。
五回コールで・・・

『はい、菊正宗です』
「あ、和子姉ちゃん?」
『あら、悠理ちゃん。清四郎なら出かけてるわよ』
「何時に帰るかな?」
『う~ん。帰ったら電話させるわ。ね』
「うん。お願い」

和子姉ちゃんは清四郎に似ていてバリバリしてるけど、あたしには優しいんだ。
本当の妹みたいに見てくれる。
豊作兄ちゃんとは違って、もっと近い家族みたい。
いつくるか分からない電話をじっと待つのはイヤだから、ミルクたっぷりのホットチョコレートとバタークッキーを持ってきてもらう。
外は木枯らしが吹いて寒いけど、部屋は暖房が効いていてポカポカ。
珍しく大好きな音楽もなしにして、おやつを食べながら電話を待つことにした。
温かいホットチョコレートは大きなマグカップにたっぷり入っていて、甘くておいしい。
手作りのバタークッキーとホットチョコレートを全部食べると、身体中が熱いくらいだ。
ホカホカ気分になったところで着信音が鳴った。
清四郎の携帯電話番号だ。

「もしもし」
『清四郎です』
「うん」
『お電話をいただいていたようで。留守にしてました。すみません』
「ううん」

電話の向こうの清四郎の声は落ち着いていた。
そう、まるで、木枯らしが吹く寒い外から帰ると、リビングは暖房で暖まっていてホッとするような、そんな落ち着き。
分かるかな?

『どうしたの?』
「英語のテストの範囲で分かんないところがあって」
『うん。どこかな?』

あたしは教科書のテスト範囲のページにある分からない問題を伝える。

『ちょっと待ってね。今、教科書を見るからね』

清四郎の動く音が聴こえてくる。
その音はあたしの耳にすっと入ってくる。
それくらい周りは静けさで満ちているんだ。

あたしのために、教科書を見てくれてるんだね。

『ああ、ここ、文法が複雑だから。悠理には難しいかも。説明が必要ですね』
「じゃあ、明日、学校で」
『来たら?』
「今?」
『ええ。まだ4時だし。名輪さんに乗せてもらって』
「う~ん」

あたしが動くことによって、静けさや暖かみが消えていくような気がする。

『今夜、すきやきにしてもらうから。おいで』
「すきやきか~」

静けさから一転、ぐつぐつの鉄なべが想像できる。

「おいしいデザートでも持って、じゃあ行こうかな~」
『教科書も忘れずに』
「わーってるよ!」

静けさの中に漂う、優しい温かさを感じた。確かに。
ちょっと不思議な気持ち。
それは多分、清四郎だから、なんだと思う。
他のメンバーとは違う、普段は感じられない、けれどどこか包み込んでくれるような、そんなあったかさ。

この感じ、好きだな。

苦手な勉強を教わるのに、うきうき気分もどうかなって思うけど。
英語の教科書とノート、筆記用具をトートバッグに入れると、手作りのバタークッキーをもらいに厨房へと向かった。




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