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秋の空と同じくらい遠い思い出

たまたま偶然、コンビニエンスストアの駐車場から車を左折で出そうとしたとき、
右側から見覚えのある車が走ってきた。
似てる車は山ほどあるけれど、でもあたし、多分そうだって直感で思った。
目の前を通る運転席に座るのはやっぱりそうで、あたしはすぐに左折してその後を追うように走る。
それからすぐに、以前にも同じようなシチュエーションがあったことを思い出した。
あの時、あたしはあいつの車のルームミラーに向かって手を振ったり笑ってみせたりした。
けれど・・・当たり前だけど気づかなくって、それ以上近づけなくって。
後でそのことを伝えたら、

「悠理って気づかなかった。僕は法定速度を守るから、いつも煽られ気味になるんですよね。
だからまたって思ったのかも」

だって。
それから、互いに取ったばかりの免許の話をした。
高等部を卒業したばかりの3月だった。
今は大学も別で、これから先の未来も全く別で、もうあの頃みたいにはなれないんだ。
きちんと車間を守って、ルームミラーに時々映るあいつの頭を見る。
あいつったら片腕を無造作に動かしたり、後部座席を気にしたり、窓の外を見たり、結構落ち着きない。
あたしは、いつあいつがあたしに気づいてもいいように、ずっと笑顔でいる。
だって自然にそうなるんだもん。
笑顔で運転しながら、一緒にいた時間を思い出す。
いろんな場所に行って、たくさん話をして、いっぱい笑った。
あいつの笑い顔も、話し声も、触れた身体の温かみも、全部よみがえる。
覚えてるよ、楽しかったね。とっても。

どちらかと言うと苦手なタイプのあいつが気になりだしたのは、思ってもみない向こうからのアクション。
好きって言われたんじゃない。
ただ、“悠理は綺麗だね”って、面と向かって言われた時から。
たまたまサボってしまった一時間目。
生徒会室にいたあたし達は空の話をしていた。
空、秋色の空、澄んだ空気と遠くに浮かぶ雲の話。
窓辺に寄り添って、二人で空を見上げて。

「夏の空はどっかーんってパワーがあって大好き。
でもこうして静かにこの空を見てると、秋の空もいいなって思う。
空気が澄んでいて空が高くって。雲も優しく広がって・・・綺麗だなって」

だんだん照れくさくなって、あたしはあいつに横顔を向けて空ばかりを見る。
会話が途切れ、静かな時間が流れる。
聴こえてくるのは風が吹く音。

「きっと、悠理の心が綺麗だから、見える全てが綺麗なんだと思うよ」
「・・・・・」

「悠理は綺麗だ。僕が今まで見た中で、一番綺麗だ」

あたしはすっかり固まって、ただじっと空を見上げていた。
“好き”って言われたんじゃない、“付き合おう”と言われたわけじゃない。
勝手にあいつが思ったこと。

「ありがとね」

あたしはそのまま、そう言った。

その後のことは覚えていない。
緊張しすぎちゃったからだと思う。

先に見える信号が赤に変わる。
直進するあいつと別に、あたしは右折のために車線変更する。
ゆっくり近づき、あいつの車の横を通り過ぎる。
きっと気づいていないあいつに、あたしはまた横顔を向けている。

またね。
いつかまでの間、さよなら。

ちょっぴりドキドキして、笑顔のままで。
信号が、今度は青に変わる。
横顔に直進するあいつの車を感じながら、あたしは交差点の真ん中に向かった。




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