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秋祭りの日

いつになく暗い顔の清四郎があたしの後ろを無言で歩く。
目元がどんよりしていて、下向き加減。
普段ならメンバーの先頭を歩いているくせに、変なの。
でも理由は知ってる。
清四郎の大事な幼馴染の野梨子が、あたしの親友の魅録と付き合い始めたから。
去年の秋祭りは、清四郎の隣は野梨子だった。
もちろんあたしの隣は魅録。
けれど冬になるころから野梨子の視線の先が変わった。
冬が終わり春が過ぎ、夏になるころには野梨子の視線に重なるように魅録が向き合っていた。
それは良かったと思う。
前みたいに二人で遊びに出かけたりはできないけれど、野梨子も魅録も幸せそうだし楽しそうだし、
あたしは大好きだから嬉しいよ。
でも・・・後ろの彼氏はどうかしら?
不機嫌極まりない感じ。
彼女を取られた彼氏みたいにイライラしてる。。

学校帰りに秋祭りに寄る。
毎年メンバー全員で立ち寄るけど、今年は美童と可憐がそれぞれの恋人とデート。
子供祭りには行かないわって、授業が終わってすぐに下校した。
野梨子と魅録は一緒に行こうって言ったけど、二人で好きなように歩き始めた。
そして・・・あたしは、屋台を見て歩きたいのに、後ろの彼氏がのろのろとおもしろくなさそうに歩いちゃってさ。
もう、食欲がわかなくなるじゃないの!

「清四郎、ほれ」

あたしは後ろを歩く清四郎に手を差し出す。

「下ばっかり見てたら、迷子になっちゃうぞ。手をつないであげるからさー」

普段なら、

「そんな恥ずかしいことできますか!?」

って言ってあたしの手をぺちっと叩くだろうに・・・

「じゃあ、はい」

と言ってあたしの手を軽く握った。

「・・・・・」
「悠理の手は意外と冷たいんですね。外はこんなに暑いのに」
「そう?けっこう体は暑いけどな」

ちょっとびっくりしたあたしは、屋台を見ることを忘れて歩いていた。
すっかり日が暮れて、秋祭りの照明がつき始めた。
屋台の光がとってもきれい。

「悠理、お腹すきましたね」
「うん。なんか買って食べたい!」
「それもいいですけど、ファミレスかどこか行ってゆっくり食べたいな」
「魅録たち、どこ行っちゃったんだろう?」
「もうどこか遠くへ行ったでしょ?僕たちもご飯食べに行きましょうよ。
屋台よりもゆっくり座って食べられますよ」

「一緒じゃなくて、いいの?」

あたしは立ち止まり、つないだ手を離して振り返る。
一瞬、周りの騒音が消えたような気がする。

「野梨子と一緒がいいんじゃないの?本当は」

清四郎はあたしを見てにっこりと微笑んで、答える。

「悠理が手をつないでくれたから、僕に道しるべが与えられ、行くべき先が見つかったかったような気がします」
「え?」

清四郎が手を伸ばし、離れたあたしの手を握る。

「さっきより、悠理の手は温かい。僕のおかげかな?」

それからあたしの手を引いて、あたしの少し前を歩き始める。
いつもの、清四郎みたいだ。

「いつもの、清四郎に戻ったね」

あたしの言葉には答えないけど、握った手がちょっとだけ強くなる。

まずは、良かったね、清四郎。
先のことは分からないけれど、普段が一番だからね。

あたしも握った手に力を入れる。
屋台を後ろに、清四郎と前に進んだ。



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