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・・ハジメテノコイ・・

街を歩いていたらミュージックビデオが流れていた。
見たこともない、興味もないような映像。
だけど、つい目が留まったのは、知っている誰かを見たから。
誰かというのは知っている友人なんだけど、多分、絶対、そう。
一瞬、でもそれは確実で、良く知っている二人は、どうしてこんな所にいるんだろう。
どうして彼・・・彼らは映っていたんだろう。
ショウウィンドウは楽器店のもので、この通りを歩く人を映していた。
自然にカメラへ収められている人もあれば、意識的に撮られた人もいた。
友人はカメラを向けられていたのか、最初は不審な顔をして見合っていたが、カメラマンが事情を話したのか、
今度はカメラを意識して照れたような笑みを浮かべていた。
二人の笑みの後ろでは、最近流行している曲が、まるで二人のためだけのように流れていた。
友人たちの映像はそこで終わった。
数秒・・・そして画面はすぐに全く別のものに変わってしまった。

あたしの知っている彼ら。

彼らは幼馴染で、まるで夫婦のようにいつも一緒だった。
どちらか片一方しかいないのは不自然なことのようで、「どうしていないの?」とつい訊いてしまう。
だからその映像はあたしの中で、安堵という形で収まった。

あたしの足は駅前のショッピングモールへと進む。
時間は正午を過ぎていて、秋なのに日中は夏のように暑い。
背中に流れる汗は、白いコットンシャツに大きなシミを作るかも知れない。
そうして背中を気にしながら歩いていると、今度はどこからか自分を呼ぶ声が聞こえたような気がした。
一度、二度・・・三度目で声の主を探す視線の先に相手を見つける。
彼はさっきの映像のような、控えめな笑みを湛えていた。
あたしの視線と合うなり、その笑みを浮かべ、ちょっとだけ頭を傾けて近づいてくる。
名前を口にしなかったら、あたしではない別の誰かに向かっているように思える。
あたしを見つけて、あたし名前を口にし、あたしに近づいてくる映像の中の彼に、胸苦しさを覚えたのはなぜだろう。
ほんの少しだけ立ち話をして、彼とは別れた。
どんな話をしたかはあまり覚えてはいない。
彼は今日はひとりで、けれど「どうしていないの?」と訊くのを忘れてしまっていた。

別れたあと、胸の苦しみは以前にもあったことだと思い出し、それはもうずっと前、もしかしたら幼稚舎のころから感じていたかも知れなかった。
けれどもこの苦しみの奥で、嬉しさに似た心の温かみも同時に感じていた。









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