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恋の手解き

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さて本日アップは、他サイト様へプレゼントした作品です。
多分・・・自分がサイトを持っていなかった頃の、古い作品だったと思います。。
恋の手解き





僕が彼女と出会ったのは、僕の友人の父親が経営する英会話スクールだった。
彼女は自分の仕事上、どうしても英語が必要だったらしいが、
僕の方はスクールの教師でもある友人に頼まれて教師の補助(僕の方がネイティヴスピーカーで当り前なのに)として、
付き合いで通っていた。
友人は僕好みの日本人女性だし、通わないわけにはいかない。


彼女は普通のOLだった。
スラリとしていて、短い髪の毛がピョンピョンはねていて、どこか悠理に似ていた。
でも僅かに怯えた瞳が、全くの別の印象を与えた。
或いは、僕の外見に怯えているのかも知れない。
彼女の内気に見える性格上、僕みたいなタイプは苦手なはずだ。


僕と彼女のクラスはビジネスクラスの上級で、でも僕にとってはやはり退屈なクラスだった。
クラスのレベルもそれほど高い方では無かった。
正直、教師の補助なんて必要ないのではないかとさえ思った。
受持ちの教師が友人でないのが余計そう思わせた。
だから時々、魅録を引っ張って来た。
清四郎じゃ誘う前から断られそうだし、野梨子も同じだ。
可憐を誘っても、玉の輿に乗れそうな男性教師も生徒もいなかった。
悠理に至っては論外である・・・だから魅録である。
彼も最初は嫌がったが、野梨子を口説く方法を伝授すると約束したらノコノコ付いて来た。
純粋である。


レベルが低いクラスでも、クラスメイト全員が、それぞれの理由で真面目に授業を受けていた。
大人になってからの勉強と言うものは、学生時代のそれと違って真面目になるものだ。


彼女の発音はとても素晴らしかったけれど、単語に乏しかった。
だから男の米人教師の質問に上手く答えることが出来なかった。
多分頭の中では、日本語でうまく答えられているに違いない。



僕と彼女が親しくなれたきっかけはこんな事からだった。



その日は出席者が十人位で、教師はある企業に対する数社のプレゼンティションの場面を設定した。
僕の役は、数社を相手にそのプレゼンのモチヴェィションを聴くものだった。
モチヴェィションなんて適当に答えて良かった。
教師が求めていたのは素早い対応だった。
正確な文法何てどうでも良かった。


場は穏やかに進んだ。
僕の適当な質問に、クラスの皆は面白おかしく答えを返した。
でも彼女の番になった時、僕はどういう訳かちょっと意地悪な質問をしてしまった。
彼女の頭の中では、もっと違う簡単なモチヴェィションが用意されていたのだ。
文法に間違えなど無い綺麗な英文が。
彼女は真っ赤になって混乱しているのが良く分った。
クラスメイト全員が、教師が、彼女に注目した。
彼女は僕の質問に答えられずに動揺し、「すみません」と日本語で答えてしまった。
すぐに教師は場を取り持ち、一瞬張り詰めた空気がまた和んだ。
その後教師は、色々なシチュエィションの対応について教えていた。
僕は気になって時々彼女の方を見ていたが、彼女は教師の説明に耳を傾け、ノートを熱心に取っていた。


授業が終わった後、すぐに彼女は席を立ちクラスを出て行った。
僕はすぐに彼女を追った。
スクールは小さなビルの三階にあり、彼女はエレヴェイターを使わずに通路の奥にある階段を下りて行った。
僕は途中、階段の手摺から身を乗り出し、一・ニ階の踊り場を歩く彼女に声をかけた。
彼女は僕を見上げると軽く会釈をした。
その顔に笑顔は無かった。
僕は彼女に追いつくと彼女の前に立ち、


「さっきはごめんなさい」


と謝った。


「さっきはごめんなさい。悪気は無かったんだ。
もっと別の、他の人達と同じような質問を用意していたんだけれど、自分でも良く分らないんだ。
急にあんな質問をして。本当に悪かったと思うよ」
「気にしなくていいですよ。実力ですから」


彼女は諦めたように微笑した。


「本当に気にしないで。ごめんなさい。電車の時間があるから」


彼女の口調はどこか怒っているように聞こえた。


「もしあなたにお時間があるのなら、夕食でも一緒にどうですか?
さっきのお詫びとしてごちそうします」
「ありがとう、でも今日は都合が悪いの。また今度。じゃあ、失礼します」


彼女は僕を横切った。





これが僕の女の子と親しくなる方法の一つである。


僕は最初から別離を前提に誘い、彼女(あるいは彼女達)を傷付けてしまうのである。



次の授業に彼女は現れなかった。
その次の授業には出席した。
クラスに入って僕と目が合うと微笑し、僅かに頭を下げた。
それから少し躊躇うように僕の横に座った。


「この間はどうして休んだの?」
「会社の会議が長引いちゃったんです」
「授業の後、夕食でもどうですか?ちょっとしつこいようだけど」


彼女はちょっと考えるようにして首を傾げて言った。


「いいですよ。ごちそうになります」


”ごちそう”に力を込めた言い方に、僕と彼女は笑った。


そして・・・笑顔を向ける彼女は、すぐに僕に夢中になる。


授業の後、僕は彼女の気に障らない程度に肩を抱き、
頭の中で今から行くレストランのリストを並べた。


「ゴホン、ゴホン」


振り返ると、今まですっかり忘れていた魅録がそこに立っていた。


「ずいぶん楽しそうじゃねえか」


でもその目は笑っていない。俺の事はどうなってるんだ?と言わんばかりだ。


「モノスゴイ条件反射だな」


僕は魅録の方に歩み寄り、そっと耳元に囁いた。


「こんな感じだよ 」
「こんな感じって・・・?」
「こんな感じに女の子を口説いていくんだよ」
「バ、バカ!野梨子とじゃ違うだろ」
「これが最初の一歩だよ、魅録君。後は応用して自分のペースに・・・さ。簡単だよ」


僕は飛切りのウィンクを魅録にし、彼女の方に戻るとその肩をもう一度抱き、
振り返る事なく立ち去った。
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