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それぞれの想い・・・

ナンでもないなんてうそ。
いつも通りを装っていたって、心ここにあらずじゃん、魅録。
さっきからあたし、お前の名前を呼んでいるんだぞ。

「ねえっ!魅録ってば!!」
「あん?なんだ、悠理」

海にツーリング行こうって誘ったの、魅録の方じゃんか。

「お腹空いた~」

魅録はちょっと顎を上げて、眉間に皺を寄せる。

「もうちっと、待て」

そう言って遊歩道の柵に腰をかける。

「見ろよ、悠理。綺麗だな」

朝焼けの空。
それをうっすらと映す、水平線。

ナンでもなければ、綺麗に見えるよ、あたしだって。

でも、寒すぎる。
今の季節は、寒すぎるよ。
お揃いのライダースーツは、ちっともあたしを温めてくれない。
それに・・・魅録の気持ちがどっか行っちゃってるのも問題。

そんなあたしの気持ちに気付くこともなく、魅録はずっとずっと遠くの国へと心馳せている。
ずっとずっと遠くの国の王女に心馳せている。
心馳せる?思いを馳せる?この表現って正しいっけ?また清四郎にバカにされるぅ。
独り問答しているあたしなんて、魅録にはどうでもいい感じ・・・ちょっとからかってやれ。

「”暁の太陽のかけら”なんて、可憐もかっこいいコト言うよな」

あたしは嫌味っぽく魅録の隣で言ってみた。
魅録はムッとしたような顔を海を見たままでしたけれど、怒ってるワケじゃない。
ただ・・・懐かしんで、せつなくて・・・浸ってたいんだろ?

浸っていたいだけ、なんだろ?


「・・・・・夜明けだ」


太陽がさーっと黒かった海を赤く染め始める。
じっと見ていると、あっという間に海が本来の海の色になり、
夜明けの空も見慣れた色へと戻る。
真っ赤だった魅録の髪の毛も、いつものピンク色になる。


ふう、と深い溜息を吐く。
恋煩いだね、全く!


「なあ、魅録」
「なんだ」
「行きたきゃ連れてってやる、いつでもさぁ」
「なんのことだ?」
「だからあ~」
「だからあ~なんだ?」
「会いたいんだろ?チチに」
「ぅっ!!」

魅録は小さく呻く。かわいいねぇ、魅録ちゃん。

「別に、そんなんじゃない。そのうち、忘れる」

やっぱりね。

「魅録、あたしが忘れさせてあげようか?」
「ばーか」


ナンダヨッ!思い切って言ったのにっ!
もう・・・純真な乙女の告白なのに。

結局茶化される。
なあ、魅録、あたし本気なんだってば・・・

海からの冷たい風が、キーンと心の奥底までも冷やしてく。
ほんのちょっと先、手を伸ばせば、触れる所にいるのにさ。

魅録の、バカ。



ヴィ~~~ン・・・


あ、ヴァイブ。
メールかな?


清四郎からだ。

なんだあ、こんな朝早く。


おはよう。
魅録とツーリングって、今は戻っているのか?


おっす。
へへへ~朝帰り。
今一緒に夜明けのコーヒーだよ。
で、なに?


送信した直後に着信だ。ったく・・・

「なんだよ」

『魅録に用事だったんだ。
ドライヴモードになってるでしょ?
昨日一緒にツーリングって言ってたから』

「ああ、チョット待って」

『あ、いや、いいんだ。悠理、待て』

「ん?」

『お前にも用事があったんだ』

「ついでか?」

『前に言ったろ?魅録の事はそっとしておけと』

「違うやい!魅録に誘われたの!」

「なんだあ?」

と間抜けな魅録の声。

「いいのこっちの話」

あたしは魅録に背を向けて、携帯に向かって怒鳴る。

「別になんも言ってないし、浸ってるのに付き合ってんのっ!」

『はあ、そうですか。それはすみませんね。で、お前はそれで、いいのか?』

「ふぇ?」

『悠理の気持ち、知ってるんですよ、僕は』

「ぅっ!」
 
『魅録の気持ちは、すぐには変わらない。だから、お前が傷付くだけだ』

「清四郎には関係ない」

『関係なくはない。仲間なんだし。事情を知ってるんだ』


清四郎はそのまま口を噤んでしまった。
じっとして次の言葉を待っていたけれど、なかなか喋ってくれない。
波の音と風の音だけが聞こえてくる。

もしかしたら、清四郎も聴いているのかもしれないと思った。
だからあたしも、何も口にできなかった。



「悠理」

魅録が首を傾げてあたしを見る。

「どした?電話、終わったのか?」

あたしも魅録を見上げて、首だけを振る。

「清四郎、魅録と代わる?」


『僕だったら・・・悠理を傷付けない』

「えっ?」

『僕が、忘れさせてやる』


!!
ええ~っ!!
それって問題発言!


言葉を失って携帯を凝視していると、魅録がそれを取り上げようとする。

「おい、清四郎なのか?」

『悠理、悠理?』


清四郎の声が聞こえて、思わず携帯を胸に当てた。
心配そうにあたしを見る魅録を見つめ返す。


「誰なんだ、悠理」
「だから清四郎だよ・・・」
「貸せ」
「やだ・・・やだもん・・・」


涙が溢れて、気持ちまで溢れる。

今のコト、魅録に知れたら・・・知れちゃったら・・・


「いいから、貸せ。何やってんだ、あいつ」
「いいってばっ!!」


こうしていることすら、失われるんだ。


「せ、せいしろ・・・切るぞ・・・魅録には、電話さすからさ」

『あ、ちょっと・・・あの、悪かった、悠理。さっきのは忘れてくれ』

「へ?」


なんだ、なんだ、なんなんだ・・・!!
一瞬、頭の中が真っ白になる。


「分かった。忘れるから。切るぞっ!」

『待て待て。本当に忘れられては困るんだが・・・』


あたしは胸が苦しくて、泣きそうになる。
目の前に、大好きな魅録がいる。
想いが届かない、魅録が・・・

「ど、どっちだよ・・・」

『ああ・・・すまない・・・保留にしてくれ』

「考えとくよ、一応。でもさあ、清四郎だってあたしとおんなじになるかも、なんだぞ。
た、例えばさ・・・」

『僕なら、絶対後悔させない自信はある』


・・・・・。
清四郎と、あたし?何だか不釣合いな感じ。


「ふふ、こんな時でも自信満々なんだ」

『どんな時でも、それだけは取柄なんで』


ほんの少し、清四郎との時間が流れる。
今度は、互いの息づかいだけが聞こえた。


「じゃあ、切るね?」

『ああ』


あたしは静かに携帯の電源ボタンを押した。


「清四郎、何だって?」
「後で魅録から電話欲しいって」
「へ?それだけ?」
「うん」
「悠理、あのさ」
「もう、何も訊かないで」


今は。
これ以上は。
魅録への想いが、グチャグチャになるから。

純粋な想いが、なくなりそうだから。



なあ、魅録。
どうしてお前は、チチへの想いが揺らがないの?


あたしじゃあ、ダメなの?



清四郎の、ばか。
自信満々って・・・


想いが・・・フェイド・アウトしそう・・・





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